Creation Soup Volume Two (1991)
2006年 06月 16日
これまでに発売されたシングル盤のAB面両曲がカタログ番号順に23曲も並べられています。勿論、今となっては大変貴重な音源に相違ありません。
Rough Trade Recordsが躍進する1980年代半ばのイギリスのポスト・パンク/ニューウェイヴ以降のインディー・シーンのみならず、稚拙ではあるものの勢いに任せて思いの丈をぶちまけたうだつの上がらない七転八倒する若者たちの姿を切り取った1枚でもあります。
冒頭を飾るのはグラスゴーの万年モラトリアム番長、The Pastelsの3曲です。意外と様々な音色が楽しいM1「Million Tears」を皮切りに、後年、幾度か再録音されているM3「Baby Honey」は執拗に同じコードを繰り返し攻め立てる呪術的な1曲といった具合にアルバムを残せなかった彼らの活躍を確認することが出来ます。
M2「Surprise Me」が彼ら自身の名曲「Stay With Me 'Til Morning」にそっくりなのはご愛嬌ということでしょうか。
個人的に本盤の最大の聞き所がPrimal ScreamのM13「It Happens」です。彼らのデビュー・シングル『All Fall Down』(1985)のB面曲です。
The Byrdsの如く煌めく12弦リッケンバッカーの音色とシャッフルのリズムがBobby Gillespieの頼りない歌声を支え、夢見るようなメロディー・ラインを引き立てています。
たった2分のこの楽曲が日常のしがらみやら苛立ち、焦燥感などのつまらぬことを一切合切洗い流してくれる訳です(←現実逃避というやつです)。
未だ現役、アルバム毎に異なる方向性を打ち出すことでファンを魅了していますが、個人的にはこの1曲で充分に満足です。何ものにも代え難く、結局、彼らのデビュー・アルバム『Sonic Flower Groove』(1987)すら売り飛ばしてしまう始末です。
まるで素人の与太話のようにしか聞こえないSlaughter Joeと本来ならば収録されるべきThe Jesus And Mary Chainをなぞっただけにしか聞こえないMeat Whiplashが続く後半の流れはいただけません。
そこでCreation Recordsの主宰であるAlan McGeeの懐刀、The Loftに救われます。M21「Time」の持つ鬱蒼としたやるせなさが聴く者の胸の内側を密やかにえぐり去って行きます。
裏ジャケットに記載されたAlan McGeeからのメッセージを引用してみます。
"本作は現在廃盤の初期Creationのシングル盤の全貌を捉えたシリーズの1枚。最初の20枚は二つ折りのスリーヴで、Joe Fosterと私が週に4回か5回は夜を徹して折っていたものだ。このシリーズは偏執狂的なCreationファンのためのもの。これでまた全部手に入るはずだ・・・もう手紙を送って寄越すな!"
収録曲は以下の通りです。
M1「Million Tears」The Pastels
M2「Surprise Me」The Pastels
M3「Baby Honey」The Pastels
M4「Spiral Girl」X-Men
M5「 Bad Girl」X-Men
M6「One Charming Night」Les Zarjaz
M7「My Baby Owns a Fallout Zone」Les Zarjaz
M8「Up the Hill & Down the Slope」The Loft
M9「Tuesday」The Loft
M10「God Bless」The Bodines
M11「Paradise」The Bodines
M12「All Fall Down」Primal Scream
M13「It Happens」Primal Scream
M14「 What's Happening」Jasmine Minks
M15「Black & Blue」Jasmine Minks
M16「I'll Follow You Down」Slaughter Joe
M17「Napalm Girl」Slaughter Joe
M18「Don't Slip Up」Meat Whiplash
M19「Here it Comes」Meat Whiplash
M20「Lonely」The Loft
M21「Time」The Loft
M22「Surely Some of Joe's Blues」Slaughter Joe
M23「Fall Apart」Slaughter Joe