Raphael Chicorel / I'm In Love With You (1972)
2006年 09月 27日
この不思議な期待感を見事に裏切る音世界が描かれていることをひとたび知れば、こうした機会が与えられたことに対して感謝するのみです。
Raphael Chicorel がRay Tabs率いるピアノ・トリオを従え、緩やかに始まるM1「At Least We Had This」からの4曲が実にしっとりと心和む楽曲ばかりです。
この滑らかなすべり出しに先手を打たれことからすっかり本作『I'm In Love With You』の世界に引き込まれてしまいます。
Raphael Chicorel自身の7歳の息子(Jocko君)の無垢で幼気な歌声が大変に可愛らしい、ジャズ・ワルツのデュエット曲M5「Walking with Jocko」が前半の聴きどころでしょう。否応無しに心温まる1曲です。
「Tighten Up」Archie Bell & The Drellsそっくりのオルガンが唸りをあげるM6「I'm Glad It Was You」からその前半において尻上がりに調子を上げて行きます。
小粋なヴォーカルに次いで、終盤に来て渋くスキャットを決めるM7「You're My Reason」を挟んで既視感をすかさず呼び起こすM8「The Bird」の「Tighten Up」っぷりを再び堪能する羽目に。思わず血が騒ぎます。
後半の1曲目、表題曲でもあるM9「I'm In Love With You」からは、これまでの編成にさらに女性ヴォーカリストのSandra Mandellaを迎えての6曲が収録されています。
ひと際歌心溢れるM11「You're My Christmas」が泣かせます。
この後半のSandra Mandellaがしっとりと迫るジャズ・ヴォーカルに再びひとしきり浸ったところで、歌入りとは言え三たび「Tighten Up」丸出しのM14「All That Love Making」にて迎撃されてしまいます。
要所をファンキーなソウル・ジャズにて締めるという計らいに技あり、です。
自然と心を丸裸にされ、優しい気持ちになれること請け合いの1枚です。