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by chitlin
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串田アキラ / からっぽの青春 (1994)

 本作は幻の名盤解放歌集*東芝編に当たる『からっぽの青春』、串田アキラの単独盤です。“串田アキラの爆発するソウル歌謡”という副題そのままの焦げるように熱い1枚です。

串田アキラ / からっぽの青春 (1994)_e0038994_23584334.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 ナイアガラ大瀑布の滝壺の深さよりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 串田アキラと言えば。自分にとっては勿論後付けではありますが、1980年代前半に集中する特撮ヒーローものやアニメ番組の主題歌でお馴染みの大歌手という訳です。

 例えば『太陽戦隊サンバルカン』に『宇宙刑事ギャバン』とそれに続く宇宙刑事シリーズのほかにはアニメ『戦闘メカ ザブングル』や『キン肉マン』といったところです。
 また、富士サファリパークのCMソングについて、韓国出身の元同僚によりますと来日後今でもいちばん衝撃を受けた歌であるとのことです。

 小学生だった当時、誰が歌っていようと当然の如く一切お構いなしに虚構の世界へと没入していた訳です。それから四半世紀を経てしがない会社員になってしまっている現在、巡り巡ってその熱い歌心が満載の本盤が手元にあり続けるというこの事実。運命と言ってよろしいのかも知れません。

 デビュー曲のM1「からっぽの青春」が発売されたのが1969年でして、NHKの『ステージ101』ヤング101の一員としても活躍したということですから相当な経験を積んで来たのでしょう。太く力強い歌唱の連続に圧倒されること間違いなしの全18曲です。文字通りに“魂の歌”、ソウル歌謡が爆発しております。

 その渋味すら感じさせる迫力のM1「からっぽの青春」からして彼の器の大きさを窺い知ることが出来ます。本盤の表題曲だけありまして、熟成したサザン・ソウル風味のバックトラックと相俟って、虚しさが煮え立つように歌われます。 

 前半での山場としては筒美京平作曲のM6「純愛の唄」を挙げられます。歌い出しから盛り上げる熱い歌い口にうなされるも、一気に突き抜ける2分余りなのです。
 更には続くM7「愛の世界」によってだめ押しされ、溢れ出す慈しみに胸が締め付けられること必至です。

 終盤にかけて一段と盛り上がるのは英語詞を交えたM17「あやまち」と円熟味を増したM18「しあわせの限界」に依るところです。実にツボを押さえた締めくくりです。

 楽曲としていちばん耳に残るのが樋口康雄作曲というM14「愛の記憶」でしょう。こう胸の透くような滑らかな旋律と脂ぎった歌が混じり合い言葉を失うほどの逸品に仕上げられています。ソウル歌謡のど真ん中にあって、華麗な一面を垣間見せてくれます。

 まさにソウル歌謡の王者、串田アキラが雄大に歌い込む姿を余すところなく捉えた好盤です。
by chitlin | 2006-12-30 23:57 | J-Pop