Hey Ho Let's Go!


by chitlin
カレンダー

夜のメカニズム (1996)

 本作は幻の名盤お色気キューティ・ポップ解放歌集*ポリグラム編という変則的な1枚、『夜のメカニズム』です。

e0038994_0452763.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 政治とカネが孕む問題よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 冒頭に置かれた操洋子の4曲のうち、見事に浮き上がる軽快なラテン歌謡のM3「太陽の女」以外は、さすが“夜のワーグナー”藤本卓也による作編曲という贅沢なものです。
 うらぶれた女という生き物を描いたM1「蝶の踊り」にM2「ゆうべの貴方」、そしてM4「真心で愛して」で目の当たりにする大人の雰囲気満点の操洋子の歌声が轟く3曲は、まさしく業の深いお色気歌謡たらんとしております。

 何気なくファズるM5「プルプル」は世間知らずを装ったようなハニー・牧の1曲です。
 このM5「プルプル」からは『キューティ・ポップ』編に突入しまして、しばらくの間かしましいガール・ポップが続きます。

 これまた何ともやさぐれた田村エミによるM6「一人だけの涙」のアラビア音階でのけぞってしまった直後、別人のような優等生歌唱のM7「白い雲ポッカリ」に拍子抜けを喰らいます。見事なまでの豹変ぶりです。

 M8「ふたつの影」の場合、一聴して立花京子を勝手に清純派と思いきや歌詞が意外とえぐいのを良いことにオートハープが若干のサイケ風味を醸し出す一方、西千曲がこの一連の流れを輪をかけて捻り潰そうとする民謡調のM9「ゴーゴー娘」で一服となります。

 今回の『キューティ・ポップ』編の中で出色の出来と思われるのがM10「恋は片道切符」です。歌い方に若干古さを感じさせるもののホーンが容赦なく切り込んで行く豪勢な編曲が白眉でしょう。

 自然と“ハートがドキドキ”して来る2枚目のシングルA面曲のM12「チャカブン」と比較して江美早苗のデビュー曲のM13「涙でかざりたい」は随分と大人びたガール・ポップです。
 その一方で阿久悠作詞のM13「恋のロリロリ」では存分にイエイエぶりを発揮するという完成度の高いフレンチ歌謡を披露しています。
 表情豊かな三段活用です。

 「I Can't Get Satisfaction」The Rolling Stonesそのままの出だしからしてシタールが妖しく響くM14「ランブリンマン」には驚愕の事実が。嘘か真か、解説によれば日本で最初にシタールが使われた楽曲だそうです。

 何とも淫靡な表題を持つM15「夜の味」で以て再びお色気歌謡に引き戻らされます。

 元々はお色気女優ではなかったという荒砂ゆきがこれまた希有な破壊力を備えて貴殿に迫りますが、甘く囁くこのM15「夜の味」と打って変わってM16「夜のメカニズム」というのがM4「真心で愛して」など比較にならぬほどにおどろおどろしい1曲なのです。
 下手をすれば喰われてしまいそうです。身震いすら起こさせます。

 語りが入るM17「いつまでも、いつまでも」は荒砂ゆき自身が作詞を手掛けています。

 達観したM19「私のきらいなもの」を歌うは沢久美です。この楽曲のシングルA面曲が、幻の名盤解放歌集のポリドール編『お願い入れて』(1993)に収録されています「ミミの甘い生活」でして、歴代のお色気歌謡の中で頂点と目されるほどです。
 M19「私のきらいなもの」自体は颯爽としたボサノヴァではあります。

 雰囲気は良いのですけれど少々古臭さが漂うM21「切ない恋のブルース」に続くのは、定番とも言うべく男女間の大人の事情が交錯するM20「電話」も意外と聞き物です。

 オルガンが隠し味で音の作りもしっかりとしたM22「赤い夕日」ではハスキー・ヴォイスが唸りを上げるのが印象的です。
 解説にある通り『キューティ・ポップ』と『お色気歌謡』の境界線に股がっているというのは言い得て妙です。

 以上のように相反する『キューティ・ポップ』編を抱き合わせた変則的な内容とは言え、大変密度の高い70分18秒なのです。




 収録曲は以下の通りです。
 M1「蝶の踊り」操洋子(1969)
 M2「ゆうべの貴方」操洋子(1969)
 M3「太陽の女」操洋子(1970)
 M4「真心で愛して」操洋子(1970)
 M5「プルプル」ハニー・牧(1969)
 M6「一人だけの涙」田村エミ(1968)
 M7「白い雲ポッカリ」田村エミ(1967)
 M8「ふたつの影」立花京子(1968)
 M9「ゴーゴー娘」西千曲(1968)
 M10「恋は片道切符」小鹿しおり(1969)
 M11「チャカブン」江美早苗(1968)
 M12「涙でかざりたい」江美早苗(1968)
 M13「恋のロリロリ」江美早苗(1969)
 M14「ランブリンマン」マイク真木とマイクス(1967)
 M15「夜の味」荒砂ゆき(1969)
 M16「夜のメカニズム」荒砂ゆき(1969)
 M17「いつまでも、いつまでも」荒砂ゆき(1970)
 M18「悪いくせ」荒砂ゆき(1970)
 M19「私のきらいなもの」沢久美(1970)
 M20「電話」早坂紘子(1970)
 M21「切ない恋のブルース」野みどり(1969)
 M22「赤い夕日」香月サコ(1968)
[PR]
by chitlin | 2007-02-07 00:48 | J-Pop