Dinosaur Jr. / Fossils (1991)
2007年 04月 28日
一世を風靡したグループの再結成もありふれたものになってしまった昨今ですけれど、遂にDinosaur Jr.も元の3人でアルバムを作り上げてしまったという話ですね。
どうにもこうにもJ Mascisの厭世的な歌声を苦手としていますので、人気のある『Bug』(1988)と『 Green Mind』(1991)ですら売り払ってしまったこともあります。
そんな中で未だに唯一持っているCDというのが、1980年代後半に在籍したSST Records時代の3枚分のシングル盤を併せたこの安直な編集盤です。
ジャケット写真の趣味に付いて行けませんけれども、内容についてはシングル曲ばかりですから流石に粒揃いです。
M1「 Little Fury Things」とM2「 In A Jar 」はいずれも『You're Living All Over Me』(1987)という2枚目のアルバム(←未聴です)にも収録されています。
出だしこそ荒涼とした風景が広がりますけれども、意外にも穏やかな面を持つM1「 Little Fury Things」は1曲目に相応しい出来ですね。
問題なのはPeter Framptonのヒット曲をカヴァーした、M3「Show Me The Way」ですよ。
練習で頻繁に演奏していた1曲とのことですけれど、これがまた史上最低と呼んでも構わないほどに下品な仕上がりです。
ベース・ギターはだらしなく間延びした音を繰り出し、汚物(失礼!)でもぶちまけているかのようなワウ・ギターをよそに酔っ払いというよりは変質者ががなっているような歌い回し。
変態ですよ、これでは。
勿論、嫌いではありませんよ。
そんな訳で次のM4「Freak Scene」が先の悪夢のような光景を見事にひっくり返してくれます。
ひと言で申し上げて、名曲ですね。カッ飛んだ轟音ギターに気怠い歌声がうまい具合に相俟って、キャッチーな旋律が紡がれております。
強引さも心地よいギター・ソロなどは白眉ですし。
このM4「Freak Scene」のB面曲のM5「Keep The Glove」の場合、その終盤に山場がありまして。
轟くディストーション・ギターの音塊を背景にもう1本のギターがまるで頭のてっぺんに響いて来るかのように鳴らされていまして、渾然一体となったそれらを全身に浴びると思わず昇天しそうになります。
この7インチ・シングルならば買っておけばよかったと、後悔したとかしなかったとか。
意外と原曲に忠実だと思しきM6「Just Like Heaven」はThe Cureのカヴァー曲です。
元々からしてメロディアスな楽曲ですし、出だしから1本、2本とギターの音が重ねられて行くのも印象深いものです。
途中で無理やりテープを切り落とす終わり方も彼ららしいかなと。
Lou Barlowの咆哮を聞けるM8「Chunks」ではハードコア・パンクという彼らの持つ根っこが露わになった1曲です。