ニャオニャオ甘えて (1995)
2007年 07月 05日
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
国民の不安を煽りまくる公的年金問題よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
それでは駆け足で追い掛けてみましょう。
ちっとも甘えたいと思えないM1「ニャオニャオ甘えて」は、“ニャオニャオ”と呑気なコーラスがたなびく異色のお色気歌謡です。
過度に熟した民悦子の歌唱がこれまた
表題の通りにSM歌謡のM2「鞭で打たれて愛されて」の場合、倒錯した内容の割には実に爽快感溢れる歌唱が印象的です。
歌っている池亜里沙自身がことのほか気持ち良さそうであることは勿論なのですよ。
無駄に暑苦しいエレキ歌謡の M4「悲しみを蹴飛ばせ」では、やはりその捨て鉢加減はもとより押しの強さにすかさず辟易してしまうほどです。
歌っている港孝也、根は良さそうな人のようなんですけれどね。
M5「パッション」は表題とは裏腹に女性に対する未練がましいすがりつくような粘着質に無性に腹が立って来ます。
そして、なぜだか子門真人ばりに歌い上げるムード歌謡とも呼べるM6「さすらい未練町」にはむせ返るほどの哀愁が充満しています。
やはり、こちらもあまりその気になれそうにないM7「甘えていいわ」ですけれども、叶ひろ子の塩辛い歌声が貴方の背中にしっかりと爪痕を残して行きますよ。
M8「愛そして命」は本盤収録のM14「天国への階段」と双璧をなすがけっぷち歌謡です。
眼も霞んで来るような締念の霧に包まれてしまいそうです。
中盤を締めるのは、あの「スナッキーで踊ろう」で以てその名を知らしめた海道はじめのM9「めぐり逢えても」です。
渦巻くオルガンと風雲急を告げるかのようなストリングスの調べが丁寧で優しい歌声を際立たせております。
ある意味、安心して聴くことが出来ますね。
ベースラインが意外と心地良いブラス・ロック風味が特徴のM12「波」については、芯の通った歌唱にも好感を持てます。
スキャットも麗しいM13「若い天国」は歌詞の中に“サイケデリック”と出て来る通りのドラッグ・ソングです。(←話半分ということで)
天国繋がりで次のM14「天国への階段」では心ここにあらずといった風情が恐ろしい1曲なのです。
歌うそばからお迎えが来そうな深い締念が漂います。ある意味、「Stairway To Heaven」Led Zeppelinよりも「天国への階段」という表題がしっくり来るんです。
これは拾い物ですね。
続くM15「ジャズ・ロック」は『エロス+虐殺』(1970)という映画のサウンドトラック盤からエイプリル・フールの演奏です。はっぴぃえんどの前史を飾るグループのひとつですね。
これは臭いますね。強烈なアシッド臭が鼻を突きます。オルガンの音色がまるで切れ目のないオーロラのように舞い上がり、聴き手の三半器官を揺さぶります。
う〜ん、アート!(←は、恥ずかしい)
前回と比較してしまいますと、相手が相手だけにうっかり印象が薄いだなんて判断をしてしまう恐れがあるかも知れません。
もっともそれは早計でありまして、人の心の奥底に巣食う真っ黒な欲望が跋扈していることが本作からも痛いほどに伝わって来るのです。
収録曲は以下の通りです。
M1「ニャオニャオ甘えて」民悦子(1972)
M2「鞭で打たれて愛されて」池亜里沙(1973)
M3「桑の実赤い実故郷の実」ヤングペット(1967)
M4「悲しみを蹴飛ばせ」港孝也(1967)
M5「パッション」港孝也(1967)
M6「さすらい未練町」斉藤不二雄とマスタッチ5(1971)
M7「甘えていいわ」叶ひろ子(1969)
M8「愛そして命」清原準(1970)
M9「めぐり逢えても」海道はじめ(1968)
M10「涙のラーメン」こまどり姉妹(1963)
M11「旅に出るんだって」じんじん(1981)
M12「波」林エイコ(1971)
M13「若い天国」田中マサコ(1968)
M14「天国への階段」夏木ミミ(1970)
M15「ジャズ・ロック」エイプリル・フール(1970)
M16「万博でヨイショ」カサノヴァ7(1970)