Alice Clark / Alice Clark (1972)
2007年 09月 12日
彼女の唯一のアルバム作品にして溌剌としたヤング・ソウルが眩いばかりです。
例によって雰囲気重視と思われるフリー・ソウルの文脈から掘り起こされたという割には、冒頭のM1「I Keep It Hid」からいずれも捨て曲のない聴き応え充分のアルバムです。
そんな中で殊更にしなやかなファンキーさを発揮しているのがM7「Don't You Care」でしょう。
炸裂するドラム・ブレイク、煌めくオルガンの音色に熱のこもった歌。
これがもう最高にファンキーな出来映えなのです。曲良し、歌良し、演奏良しの申し分のなさですね。
アルバムの終盤においても隙がなく、M9「Hard Hard Promises」、M10「Hey Girl」ともにうねりまくるベース・ラインが全体を引っ張る爽快感。盛り上げ役のホーンにも工夫の跡が存分に見られますしね。
芯の通った滑らかなAlice Clarkの歌声が自由に泳ぎ回るのですけれど、一風変わったソウル・マナーが特徴です。
それと言うのも彼女の伸びやかな歌を支えるコーラスの存在が皆無なのです。ジャズ・ヴォーカル寄りの歌唱、所以でしょうか。
その代わりと言っては何ですけれども一切の無駄を省いた締まりのある演奏が彼女の瑞々しい歌をしっかりと支えるという盤石さです。
ソウル・ミュージックとして、これほどまでに取りこぼしのないアルバムも珍しいのではないでしょうか。
楽曲の粒が揃いに揃った隠れ名盤と呼んでも一向に構わないどころか、むしろ胸を張って触れ回りたくなるような1枚ですよ。
♪「Don't You Care」Alice Clark