Heron / Heron (1970)
2007年 09月 18日
Dawn Recordsのロゴ・マークも入れられ、見開きの装丁も素晴らしい紙ジャケットCDです。
誰が名付けたのか“木漏れ日フォーク”という形容がぴったりのHeronの初アルバム作品、『Heron』(1970)。
小鳥のさえずりやそよ風が音盤に自然と溶け込んでいるのです。
と言っているそばからM3「Harlequin 2」はR&B色の強い意外な1曲なのです。
ほかの収録曲には随所にエレクトリック・ピアノなどが使われているにせよ、これはやはり例外的に感じてしまいますね。
それ以外は徹頭徹尾、のびのびとした緩やかな音が織り成すというこの空気感には堪らないものがありますよ。野外録音(!)ならではの開放感、爽やかな風を感じ取らせてくれます。
M12「Sally Goodin」を除きまして、アルバム後半には概ね不思議と統一感があります。
優しく、そして温かく紡がれて行く音に夢うつつなのです。思わず脱力と言いましょうか、なすがままという訳なのですよ。
とりわけM10「Goodbye」で聴くことの出来る粒立ちの良いギター(?)の音を全身に浴びてしまうと得も言われぬ感覚へと陥ってしまいます。
非トラッドとは言え、陰影に富んだブリティッシュ・フォーク勢とは真逆の、そして下手であっても朴訥な歌と奇を衒うことのない簡素な演奏に否応無しに浸ってしまいますね。
手作り感覚を超えて、彼らの奏でる音楽の温もりが確かに伝わって来ますよ。
この日本盤紙ジャケットCDには何と8センチCDが付属しております。
それが『Heron』(1970)後の1971年に発売された4曲入りのシングル盤を復刻したものです。結果、随分と値は張りますけれど、なかなか憎いことをやってくれますね。
解説によりますと、影響を受けたというBob Dylanをカヴァーした「Only A Hobo」を含むこの4曲こそが、実は『Heron』(1970)以前、Pye Records傘下のDawn Recordsにおける初録音だったそうで。
『Heron』について、何でもそのスタジオ録音の結果に納得の行かないが故の野外録音とのことです。気ままな成り行き任せなどではなく、こだわりの産物だったのですね。
何とも目出度い紙ジャケットCDです。