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Hey Ho Let's Go!


by chitlin
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ロック秘宝館 (1994)

 監修と選曲をロッキング・オン誌の田中宏明が担当、和田ラヂヲ渾身のジャケット・デザインが眩しい、その名も『ロック秘宝館』(1994)のご案内です。
 ワーナー・ミュージック・グループ、所謂WEA音源がぎっしりと20曲、懐かしさよりも新鮮さで胸が一杯ですよ。

ロック秘宝館 (1994)_e0038994_010579.jpg

 まさしくロック者の上級生が好きな楽曲をちまちまと拾い集めた編集テープ、そんな1本を聞かされているかのような錯覚に陥りそうになるオムニバスCDです。

 そうなのです。私、chitlinが後追いで探し求めていた音とはひと味もふた味も違う、濃密かつ踏み込んだ選曲がなされているのです。
 1996年の時点で初めて聴くものばかりでした。

 ファンキーでノリが良く適度に重量感もあるM1「Apricot Brandy」が、これまた編集テープの1発目にはぴったりですね。確かに威勢の良さだけ、なのかも知れませんけれど。
 Rhinocerosというグループについては、スワンプ・ロックの愛好家に人気だというAlan Gerberが在籍していたことくらいしか知りません。

 打って変わって、扇情的な雄叫びから怒濤のギター・リフの応酬へと雪崩れ込むM2「Kick Out The Jams」と来ましたら、開いた口が塞がらないくらいの獰猛さですね。 

 そんなMC5による衝撃的なパンク・ロックに呆気にとられていますと、地鳴りのようなベース・ラインに導かれ汗臭い歌声と渋い音色のギターがまとわりつくように響くM3「Polk Salad Annie」が堂々の登場です。
 僭越ながら、Tony Joe Whiteには“お前、男だっ!”と呼び掛けてみたいものです。

 ここで1曲、ブリティッシュ・ロックが挟み込まれます。
 ロッキング・オンでは松村雄策が必死に推していましたBadfingerによるM4「No One Knows」。
 サディスティック・ミカ・バンドのミカによる語りが意味深ではありますが、この流れの中ではひどく端正な正統派のロックに聞こえて来ますね、と思いきや。

 今も縁のないAlice Cooperに続きまして、M6「Someday Man」とM7「Mad」が演出する夢のようなひと時を過ごすことが出来ます。
 田中宏明によりますとM6「Someday Man」については当時、初CD化であったとのことです。

 本盤に限らずほかの手持ちのオムニバスCD、『Windy Warner Soft Rock Collection Vol.2』(1996)にも収録されていまして、繰り返し聴くのはこのM6「Someday Man」であったりする訳ですよ。
 転調が効果的で構成に長けた楽曲に乗るPaul Williamsの苦み走った歌声が心に染みますね。
 それとは対照的にあまりの甘さに身悶えするほかないHarpers Bizarreには目眩を覚えます。

 ゴスペル調にしてNorman Greenbaumのファズ・ギターが天空を切り裂くM8「Spirit In The Sky」に次いで飛び出して来たのが、ご存知Little Featの代表曲であるM9「Willin'」です。
 1996年当時、このM9「Willin'」を聴いても何も感じ取ることが出来なかったことを白状しまければなりません。ようやくこの土の香りを味わうことが出来るようになりましたよ。

 またもやファズ・ギターが轟くのがM10「Six Man Band」なのですけれど、これがあの「Windy」で聞き慣れたAssociationなのか、未だにしっくりとは来ないのですよ。

 M11「To Put Up With You」については、前述のPaul Williamsも一員だったというThe Holy Mackerelという無名グループも先日、アルバム作品がCollector's Choice Musicから復刻されましたね。
 もはや定番曲ですね、同様に『Windy Warner Soft Rock Collection Vol.2』(1996)にも収録されていますし。
 ここでも良く練られた曲調に悲哀たっぷりのPaul Williamsの歌声が映えます。

 軽快ながらも繊細な仕上がりを魅せるM12「I'm With You」。
 このLoveについて、1960年代末のロサンゼルスにおける裏番長のような存在と言ってもよろしいでしょうか。意外と言っては失礼なほどに達者な連中なのではないかと感じます。

 続くM13「Soul Sister」Allen Toussaintがこれまた火照った身体をゆっくりと冷ましてくれるのです。まったりするも良し、軽く踊ってみるも良し。大人の雰囲気に酔いしれるのみです。
 この絶妙な配置、物凄く重要な役回りを演じていますよ。ここ、次の期末テストに絶対に出るぞい

 火花を散らす演奏に自然と腰も揺れ動くシングル曲、M14「Suavento」はMaloによるものです。硬軟取り混ぜられているとは言え、ロック・ミュージックの坩堝にあってこの手のラテン色はひと際気持ち良く響きます。
 Jorge Santanaの存在からSantanaの弟分と言いましても、ラテン・ロックとしては地に足の着いたまっとうな演奏が光りますね。

 The Electric Prunesにしては何だか出来過ぎのM15「Hey Mr. President」の次に控えていますのが、The StoogeによるM16「Down On The Street」です。
 切れています、音が。切れの良さが段違いです。その体脂肪率は限りなく低い値を指すに違いありません。
 1970年代を超えて轟く、研ぎ澄まされた音塊。これぞロック。

 適度に熟したM18「What Happened to the World That Day?」Tower Of Powerに気持ち良く酔わせてもらっていますと、M19「Motorcycle Mama」Sailcatに軽く身体をほぐされまして。

 大トリにPhil Ochsの登場です。
 最後の最後に持って来られたM20「When I'm Gone」から滲み出る、とてつもない無常観と来ましたら。
 もう絶句するほかありません。
 嗚呼!



 収録曲は以下の通りです。
 M1「Apricot Brandy」Rhinoceros(1968)
 M2「Kick Out The Jams」MC5(1968)
 M3「Polk Salad Annie」Tony Joe White(1969)
 M4「No One Knows」Badfinger(1974)
 M5「Be My Lover」Alice Cooper(1971)
 M6「Someday Man」Paul Williams(1970)
 M7「Mad」Harpers Bizarre(1968)
 M8「Spirit In The Sky」Norman Greenbaum(1970)
 M9「Willin'」Little Feat(1971)
 M10「Six Man Band」Association(1968)
 M11「To Put Up With You」The Holy Mackerel(1968)
 M12「I'm With You」Love(1969)
 M13「Soul Sister」Allen Toussaint(1972)
 M14「Suavento」Malo(1972)
 M15「Hey Mr. President」The Electric Prunes(1968)
 M16「Down On The Street」The Stooges(1970)
 M17「Run Run Run」Jo Jo Gunne(1972)
 M18「What Happened to the World That Day?」Tower Of Power(1972)
 M19「Motorcycle Mama」Sailcat(1972)
 M20「When I'm Gone」Phil Ochs(1966)
by chitlin | 2007-09-25 00:21 | Pop/Rock