Hey Ho Let's Go!


by chitlin

おじさまいや? (1997)

 本作は、大映レコード野望編『夜を抱きしめたい』(1997)に続く幻の名盤解放歌集*大映レコード蒸発編に当たる『おじさまいや?』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 アナログのレコード盤よりも実は業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 解説にもある通り、中年紳士との援助交際を連想させる怪演、M1「おじさまいや?」とそのB面曲のM2「キッスしてっ」はどちらも秘め事などには感じられませんね。
 本盤のジャケット写真として使われているようにあっけらかんとした不釣り合いな画面が逆に生々しいとも言えるのです。

 そんな援助交際に勤しむ麻里エチコがM4「くたばれ野郎ども」におきまして、その本性を晒します。
 威勢良く啖呵を切る女番長歌謡がいきり立った中年男性たちを一気にねじ伏せます。

 回転数をいじった嘆息がこの世の終わりを感じさせる M5「浪人ブルース」については、これが世に出たこと自体、驚愕に値するのではないでしょうか。
 一般向けという枠組みを軽々と無視したテープ編集が絶妙に奏功しておりません。
 それでも、この厭世感は私、chitlinの18歳の頃と重なりますね。

 ザ・トーイズの2曲がさらに本盤の前半を盛り上げます。
 M6「お宮さん」では“しづごいぜ〜”とヴォーカリストがインドネシア出身ならではの歌い回しを楽しむことが出来ますよ。摩訶不思議なグローバル感覚を宿した希有なGSですね、これは。

 M7「じょんがらゴーゴー」におきましてはエレキが脇目も振らずに走っています。リズム隊も共に突っ走る軽快過ぎるダンス・ナンバー。
 じょんがら万歳!

 これまた解説にもある通り、M3「青春笠」で聴ける演奏がザ・トーイズそのもの(←実際には異なるそうです)なのですよ。表題そのままの青春歌謡丸出しの様子が少し痛々しいものです。

 所謂、ひとりGSと呼べるM9「泣きべそマリア」も前半の聞きどころですね。
 芯が通っていながらも、色香たっぷりの歌唱が殿方の胸を焦がして行くことでしょう。

 続くM10「真夜中の遊園地」を歌うはまたしても麻里エチコ。
 女番長からウブな少女へと早変わりを演じるように、変幻自在の彼女による舌足らずな歌がうら寂しさを倍増させることでしょう。

 それにしても、先のM1「おじさまいや?」とM2「キッスしてっ」のシングルが後から発売されていたという事実!女性という生き物はいったい・・・。

 ちっとも冒険する気に聞こえない調子のM11「冒険しちゃおかな」など女性ヴォーカルが続きまして(ガール・ポップとは言い難し)。

 大人の女の雰囲気が独りでに滲み出すM14「夜霧の中でさようなら」、実に良い喉の持ち主、島譲二のM15「恋の落日」で以て後半も盛り上がって来る訳ですよ。

 M16「札幌ブルース」にM17「涙のラブレター」、M18「蒸発」を披露する久保内成幸とロマネスク・セブンにつきましては、相当実力のあるグループとお見受けします。

 幻の名盤解放歌集*ビクター編の『渚の歓喜(エクスタシー)』(1992)にも収録されていますけれど、ムードコーラスの醍醐味を存分に味わうことが出来る本格派です。ハワイアンが苦手であることが判明した私、でさえ恍惚の表情を浮かべてしまうくらいの佳曲群です。

 見事に1960年代末の音源で固められた大映レコード野望編にありまして、妙に映像的な音作りが本盤の特徴ですよ。




 収録曲は以下の通りです。
 M1「おじさまいや?」黒沢良、麻里エチコ(1969)
 M2「キッスしてっ」黒沢良、麻里エチコ(1969)
 M3「青春笠」小川一彦(1968)
 M4「くたばれ野郎ども(大映映画『ダンプ・ヒップ・バンプ/くたばれ野郎ども』主題歌)」麻里エチコ(1969)
 M5「浪人ブルース」高木門(1968)
 M6「お宮さん」ザ・トーイズ(1968)
 M7「じょんがらゴーゴー」ザ・トーイズ(1968)
 M8「妖怪マーチ」トリオ・ザ・パンチ(1968)
 M9「泣きべそマリア」速水ユリ(1968)
 M10「真夜中の遊園地」麻里エチコ(1968)
 M11「冒険しちゃおかな」すみれシスターズ(1968)
 M12「夢でいいから」すみれシスターズ(1968)
 M13「ホステス唱歌」上野山功一とクール・バロッツ(1968)
 M14「夜霧の中でさようなら」姿美千子(1968)
 M15「恋の落日」島譲二(1968)
 M16「札幌ブルース」久保内成幸とロマネスク・セブン(1968)
 M17「涙のラブレター」久保内成幸とロマネスク・セブン(1968)
 M18「蒸発(TBSテレビ映画『蒸発』挿入歌)」久保内成幸とロマネスク・セブン(1968)
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by chitlin | 2007-09-30 23:49 | J-Pop