Hey Ho Let's Go!


by chitlin

カテゴリ:J-Pop( 50 )

おじさまいや? (1997)

 本作は、大映レコード野望編『夜を抱きしめたい』(1997)に続く幻の名盤解放歌集*大映レコード蒸発編に当たる『おじさまいや?』です。

e0038994_2347836.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 アナログのレコード盤よりも実は業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 解説にもある通り、中年紳士との援助交際を連想させる怪演、M1「おじさまいや?」とそのB面曲のM2「キッスしてっ」はどちらも秘め事などには感じられませんね。
 本盤のジャケット写真として使われているようにあっけらかんとした不釣り合いな画面が逆に生々しいとも言えるのです。

 そんな援助交際に勤しむ麻里エチコがM4「くたばれ野郎ども」におきまして、その本性を晒します。
 威勢良く啖呵を切る女番長歌謡がいきり立った中年男性たちを一気にねじ伏せます。

 回転数をいじった嘆息がこの世の終わりを感じさせる M5「浪人ブルース」については、これが世に出たこと自体、驚愕に値するのではないでしょうか。
 一般向けという枠組みを軽々と無視したテープ編集が絶妙に奏功しておりません。
 それでも、この厭世感は私、chitlinの18歳の頃と重なりますね。

 ザ・トーイズの2曲がさらに本盤の前半を盛り上げます。
 M6「お宮さん」では“しづごいぜ〜”とヴォーカリストがインドネシア出身ならではの歌い回しを楽しむことが出来ますよ。摩訶不思議なグローバル感覚を宿した希有なGSですね、これは。

 M7「じょんがらゴーゴー」におきましてはエレキが脇目も振らずに走っています。リズム隊も共に突っ走る軽快過ぎるダンス・ナンバー。
 じょんがら万歳!

 これまた解説にもある通り、M3「青春笠」で聴ける演奏がザ・トーイズそのもの(←実際には異なるそうです)なのですよ。表題そのままの青春歌謡丸出しの様子が少し痛々しいものです。

 所謂、ひとりGSと呼べるM9「泣きべそマリア」も前半の聞きどころですね。
 芯が通っていながらも、色香たっぷりの歌唱が殿方の胸を焦がして行くことでしょう。

 続くM10「真夜中の遊園地」を歌うはまたしても麻里エチコ。
 女番長からウブな少女へと早変わりを演じるように、変幻自在の彼女による舌足らずな歌がうら寂しさを倍増させることでしょう。

 それにしても、先のM1「おじさまいや?」とM2「キッスしてっ」のシングルが後から発売されていたという事実!女性という生き物はいったい・・・。

 ちっとも冒険する気に聞こえない調子のM11「冒険しちゃおかな」など女性ヴォーカルが続きまして(ガール・ポップとは言い難し)。

 大人の女の雰囲気が独りでに滲み出すM14「夜霧の中でさようなら」、実に良い喉の持ち主、島譲二のM15「恋の落日」で以て後半も盛り上がって来る訳ですよ。

 M16「札幌ブルース」にM17「涙のラブレター」、M18「蒸発」を披露する久保内成幸とロマネスク・セブンにつきましては、相当実力のあるグループとお見受けします。

 幻の名盤解放歌集*ビクター編の『渚の歓喜(エクスタシー)』(1992)にも収録されていますけれど、ムードコーラスの醍醐味を存分に味わうことが出来る本格派です。ハワイアンが苦手であることが判明した私、でさえ恍惚の表情を浮かべてしまうくらいの佳曲群です。

 見事に1960年代末の音源で固められた大映レコード野望編にありまして、妙に映像的な音作りが本盤の特徴ですよ。

More
[PR]
by chitlin | 2007-09-30 23:49 | J-Pop
 フード・ブレインの『晩餐』(1970)、象のジャケット写真が目印です。
 わざわざ疲れた身体に鞭打って聴いてみた甲斐がありました。

e0038994_004461.jpg

 1998年発売の“ニューロックの夜明け”というシリーズの第7弾、“ニューロックの真髄”をまんまと垣間見ることが出来ますよ。

 復刻監修のひとりは曽我部恵一です。同じ年の生まれなのに、まったく異なる音楽道を歩んでおられるますね。(←当たり前です)

 ギタリストは陳信輝、鍵盤担当が柳田ヒロ、ベーシストはルイズルイス加部こと加部正義、ドラマーは角田ヒロ(つのだ☆ひろ)というまったく以て豪華な顔触れです。
 これで悪い訳がないとしか言いようがございません。

 M1「That Will Do」は疾風のごとき飛ばしまくる、ブギを変体させた1曲目です。
 下りのエスカレーターを駆け上がるかのような勢い(←・・・大したことではないですね)で迫り来る気持ち良さ。

 例えばM3「Waltz For M.P.B」で言えば、The DoorsのRay Manzarekからの影響でオルガンへと転向したという柳田ヒロの演奏が前面に押し出されました、やはりThe Doorsの面影を偲ばせるサイケデリアに心を揺さぶられてしまいますね。

 アルバム全編、歌の入らないインストゥルメンタル曲にあって加部正義の演奏が否が応にも鼓膜にこびり付いて来るのです。
 希有な閃きを魅せる陳信輝によるギターや柳田ヒロが奏でる奔放な七色のオルガンに一歩も引けを取らないリード・ベースぶりが凄まじいですね。

 果たして、角田ヒロががっちりと支える屋台骨を一足飛びにすり抜けて行き、縦横無尽に駆け巡る訳ですよ。
 痺れます。

 そんな中でM8「The Hole In A Sausage」ではひしゃげたクラリネットの音も飛び出すという15分にも渡る相当錯綜したインプロヴィゼイションをたっぷりと堪能することが出来ますし。

 プログレッシヴ・ロック、サイケデリック・ロック、ブルース・ロック云々を超越したところで鳴らされるイカしたロック・ミュージックであると。ただそれだけでよろしいのではないかと感じています。

 以前に採り上げました水谷公生の『A Path Through Haze』(1971)をじっくりと聴いた際と同様、1970年代初めの日本のロックがいかに先進的であったかの証左でもあります。
 いえ、正味の話、是非とも耳を傾けていただきたい日本のロックです。
[PR]
by chitlin | 2007-09-21 23:56 | J-Pop
 本作は、幻の名盤解放歌集*日本コロムビア編に当たる『サヨナラは出発のことば』です。安田明とビート・フォークを大々的に扱った編集盤です。

e0038994_23433657.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 政治家とカネの絶妙な関係よりもはるかに業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 前述の通り、『サヨナラは出発のことば』(1975)というアルバムにシングル曲を追加した安田明とビート・フォークの音源が軸を成しています。

 そもそもは『ホイサッサ』(1973)というシングル盤でデビュー、幻の名盤解放歌集*東芝編『男と女の炭坑節』(1994)にB面曲の「男と女の炭坑節」ともども収録されているそうです。
 何を隠そう、把握している限りその東芝編の『男と女の炭坑節』こそ幻の名盤解放歌集におきまして唯一所有していないCDです。(あっ、『絶唱!野坂昭如 マリリン・モンロー・ノー・リターン 』(1999)も持っていませんです)

 ある意味、フォークとソウル・ミュージックとの融合を目論みファンクに転んだ、ようなところがあるようですね。
 それでもこのグループ、どんな手本があるにせよ至極アコースティックなファンキーさを持ち合わせていまして純和風と言いましょうか和式便所風と言いましょうか。
 ブックレットの解説に倣ってみますと築40年木造アパート風呂なし共同トイレ四畳半ファンクといったところなのです。

 そうです、彼らの音楽が“貧しさ”という言葉から逃れらないことは崖っぷち清貧ファンク歌謡であるM3「或る青春」に集約されています。
 目頭が熱くなるのを通り越して嘆息が出てしまいますよ。

 一方でM9「愛の血液合せ」におきまして、血液型占いで以て役に立ちそうにない恋愛指南を延々とぶちまけるのはご愛嬌ということで。

 『サヨナラは出発のことば』(1975)発売後のシングル曲、M11「ユムラのオババ」にはどう対処して良いのやら。
 「尾崎家の祖母」まりちゃんズほど突き抜けたところに欠けますので当然の如く面白味に欠けるのです。

 こう言っては何ですけれど、主軸の安田明とビート・フォークよりもむしろそのほかの収録曲の方が興味深いのです。

 駄目出しを連発するジュン池内が雄々しく歌い上げるM13「男と女」はビッグバンドを率いて“どうせこの世は男と女”と啖呵を切る辺り、極めて男前度が高い1曲ですよ。

 絶句するほかない神経症的朗読歌謡のM15「おはよう・・・海!」で独り相撲ひとり芝居を披露しています麻上洋子が『宇宙戦艦ヤマト』の森雪役だということなど目から鱗です。

More
[PR]
by chitlin | 2007-09-08 23:47 | J-Pop
 昭和歌謡の大家、作詞家の阿久悠氏がお亡くなりになりました。

e0038994_23385110.jpg

 時代を映す鏡としての役割を引き受け、見事に歌謡曲に昇華させた腕力にはただただ脱帽です。

 『人間万葉歌 〜阿久悠作詞集』(2005)のディスク3を締めくくる、M22「あの鐘を鳴らすのはあなた」和田アキ子を聴いております。

 故人のご冥福をお祈りいたします。
[PR]
by chitlin | 2007-08-01 23:41 | J-Pop
 今更ではありますけれど、初めて購入してみましたくるりの盤がこの『ベスト オブ くるり Tower Of Music Lover』(2006)です。
 正直に申し上げてベスト盤程度でよかろうと甘く考えているグループでもあるという訳なのです。

e0038994_22304518.jpg

 新作の『ワルツを踊れ』(2007)のせいもありまして勤務先の同僚と一緒になって少しばかり盛り上がっている最中なのですけれど、ミュージック・マガジン7月号においては巻頭特集まで組まれているんですね。

 ディスク2のM3「東京」で以てデビューした頃、その朴訥とした佇まいに多少の興味を持ったものの実際にシングルやアルバムを購入することもなく済ませて来ました。
 その次は、確か大学時代の先輩ギタリストが加入して幻想的なスライド・ギターが特徴的になっていた頃の彼らにグッと引き寄せられかけたのですけれど、本格的には聞かず終いでした。

 4人組時代でのドラマーの小回りが利きつつ力強い演奏も好みだったのですけれど、今では2人きりになってしまったんですね。

 さすがにシングル曲の出来は素晴らしく、聞き覚えのあるものばかりです。
 曲順は例えばそのシングル盤の発売された通りの順番ではありません。決して熱心な聞き手ではない身にとっては訳の判らぬ塩梅ですから先入観も特別な思い入れのない分、素直に楽しむことが出来ますね。

 先陣を切るのがM1「ワンダーフォーゲル」でして、ライヴでの激しさと違った打ち込みサウンドも熟れている好曲です。

 “ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって こんなにもすれ違ってそれぞれ歩いてゆく”と歌われる割には何だか祝祭的な雰囲気に包まれているような晴れやかな気持ちになるんですよ。

 胸をキュンとさせる旋律と乾涸びた詩情とともに、躊躇することなくというよりも貪欲にエレクトロニクスを導入するところなどは彼ららしいですね。

 それから、このM1「ワンダーフォーゲル」からM2「ばらの花」の流れが実に清々しいんです。
 ついでにスーパーカーのフルカワミキがコーラスで参加しているのがM2「ばらの花」なんですよね。切ないな、と。

 いちばん愛聴しているのはディスク1のM13「飴色の部屋」です。ぬるいひら歌から軽やかなサビを経て、重たい間奏へと転じる場面が絶品です。
 リピート設定にしておくと平気で1時間くらいは過ぎて行ってしまうんですよ。

 めがねロック、ここに極まれり! だなんてのは大袈裟でしょうね、きっと。
[PR]
by chitlin | 2007-07-08 22:35 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集*日本コロムビア編に当たる『ニャオニャオ甘えて』です。

e0038994_053052.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 国民の不安を煽りまくる公的年金問題よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 それでは駆け足で追い掛けてみましょう。
 ちっとも甘えたいと思えないM1「ニャオニャオ甘えて」は、“ニャオニャオ”と呑気なコーラスがたなびく異色のお色気歌謡です。
 過度に熟した民悦子の歌唱がこれまた気色悪い変幻自在なのです。

 表題の通りにSM歌謡のM2「鞭で打たれて愛されて」の場合、倒錯した内容の割には実に爽快感溢れる歌唱が印象的です。
 歌っている池亜里沙自身がことのほか気持ち良さそうであることは勿論なのですよ。

 無駄に暑苦しいエレキ歌謡の M4「悲しみを蹴飛ばせ」では、やはりその捨て鉢加減はもとより押しの強さにすかさず辟易してしまうほどです。
 歌っている港孝也、根は良さそうな人のようなんですけれどね。

 M5「パッション」は表題とは裏腹に女性に対する未練がましいすがりつくような粘着質に無性に腹が立って来ます。
 そして、なぜだか子門真人ばりに歌い上げるムード歌謡とも呼べるM6「さすらい未練町」にはむせ返るほどの哀愁が充満しています。

 やはり、こちらもあまりその気になれそうにないM7「甘えていいわ」ですけれども、叶ひろ子の塩辛い歌声が貴方の背中にしっかりと爪痕を残して行きますよ。

 M8「愛そして命」は本盤収録のM14「天国への階段」と双璧をなすがけっぷち歌謡です。
 眼も霞んで来るような締念の霧に包まれてしまいそうです。

 中盤を締めるのは、あの「スナッキーで踊ろう」で以てその名を知らしめた海道はじめのM9「めぐり逢えても」です。
 渦巻くオルガンと風雲急を告げるかのようなストリングスの調べが丁寧で優しい歌声を際立たせております。
 ある意味、安心して聴くことが出来ますね。

 ベースラインが意外と心地良いブラス・ロック風味が特徴のM12「波」については、芯の通った歌唱にも好感を持てます。
 スキャットも麗しいM13「若い天国」は歌詞の中に“サイケデリック”と出て来る通りのドラッグ・ソングです。(←話半分ということで) 

 天国繋がりで次のM14「天国への階段」では心ここにあらずといった風情が恐ろしい1曲なのです。
 歌うそばからお迎えが来そうな深い締念が漂います。ある意味、「Stairway To Heaven」Led Zeppelinよりも「天国への階段」という表題がしっくり来るんです。
 これは拾い物ですね。

 続くM15「ジャズ・ロック」は『エロス+虐殺』(1970)という映画のサウンドトラック盤からエイプリル・フールの演奏です。はっぴぃえんどの前史を飾るグループのひとつですね。
 これは臭いますね。強烈なアシッド臭が鼻を突きます。オルガンの音色がまるで切れ目のないオーロラのように舞い上がり、聴き手の三半器官を揺さぶります。
 う〜ん、アート!(←は、恥ずかしい)

 前回と比較してしまいますと、相手が相手だけにうっかり印象が薄いだなんて判断をしてしまう恐れがあるかも知れません。
 もっともそれは早計でありまして、人の心の奥底に巣食う真っ黒な欲望が跋扈していることが本作からも痛いほどに伝わって来るのです。

More
[PR]
by chitlin | 2007-07-05 00:54 | J-Pop
 水谷公生にとって初めてにして唯一のソロ・アルバムは全曲インストゥルメンタルで占められています。
 そんな『A Path Through Haze』(1971)を白熊店長さんが採り上げていらしたので、1998年発売の紙ジャケットCDを引きずり出して執拗にじっくりと聴いてみました。

e0038994_09593.jpg

 手持ちのCDは、曽我部恵一とサミー前田による監修の“日本のロックの夜明け”というシリーズの第8弾です。また、故黒沢進が解説を手掛けております。

 水谷公生がグループ・サウンズ時代に在籍したアウト・キャストの場合、ガレージ・パンクの傑作である「電話でいいから」などの勢い任せの疾走感にばかり気を取られてしまいがちです。

 そのギタリストがジャズ・ロックをとなりますと訳も判らぬままにわかに色めき立ちまして。
 紙ジャケットCD化ならばなおさらにといった理由をこじつけてから10年弱になるんですね。

 『A Path Through Haze』に話を戻しまして。
 喧伝されているようなジャズ・ロックということもなく、そうかと言ってよっぽど自己中心的なまでにギタ−を掻き鳴らしているかと思いきや冷静に全体を統制していることに気が付かされますし、1971年に録音されていたという先進性には脱帽です。

 ドラムスの細かいタム回しが推進力となって ギター・リフを丹念に重ねて行く表題曲M1「A Path Through Haze」からアルバムは始まります。

 どちらかと言いますとM3「Turning Point」までは抑え気味でして、M4「Tell Me What You Saw」以降の暴発ぶりが興味深いです。

 そのM4「Tell Me What You Saw」では各楽器がのたうち回るように走り出し混沌とした音の渦を作り出していますよ。
 破綻寸前とまでも行きませんけれど、相当に歪んでいましてことのほか気持ち良いのです。

 モーグ・シンセサイザーの妙ちくりんな音色が随所で顔を出すM5「One For Janis」の場合、オルガンを背に縦横無尽に駆け巡るギター・ソロともども聴き応え充分です。
 ひょっとしたら、このM5「One For Janis」がいちばんのお気に入りになるのかも知れません。
 
 M6「Sabbath Day's Sable」では綺麗なストリングスと端正なピアノに否応なく惹き付けられてしまいます。異色と言えばそれまでですけれど、美しい1曲に変わりありません。
 ここでのドラムスが訳もなく心地良く感じられます。

 ブルースの色濃いM7「A Bottle Of Codeine」を経て、最終曲のM8「Way Out」では何と女性のスキャットを交えた優雅さまで顔を覗かせております。意外過ぎますね。

 いちばん初めに聴いた際には、実はさほど好印象を抱かなかったことを告白いたします。
 拍子抜けというのとは逆に、その高みにほとんど反応することが出来なかったというのが実際のところなのではないかと今になって感じる訳です。

 きちんと向き合って耳を傾けてみますと意外なほどに各曲の輪郭がくっきりと浮き上がって来まして、各々の個性や演奏者の技、工夫の跡が印象深く残るものです。

 1971年の段階でこのような音が日本において鳴らされていたとはまさに驚くべきことです。ヨーロッパで海賊盤が製作されるほどに人気を呼んだという事実にも大いに納得です。
 ちなみに1971年と言えば私、chitlinがこの世に産み落とされた年でもあります。

 そんな時期に知ってか知らずかサイケデリックやジャズ・ロックの側面をちらつかせつつも紛いものでもなくかぶれていることもなく、言葉本来の意味でのプログレシッヴ・ロックを打ち出してしまっているというのはある種の奇跡に近いのではないでしょうか。
[PR]
by chitlin | 2007-06-22 00:11 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集ー藤本卓也作品集*テイチク編に当たる『真赤な夜のブルース』です。

e0038994_21574163.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 空前絶後の業の深さを誇る歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 このシリーズの本丸、いやさ歌謡曲の核心を絶妙に突き崩してしまった“夜のワーグナー”こと藤本卓也の魂が込められた全21曲。白昼堂々と聴くには憚れるほどの魔力を持ち合わせております。

 まずは延べ9曲が収録された矢吹健という歌い手。
 冒頭のM1「あなたのブルース」がデビュー曲にもかかわらず大ヒットとなり、日本レコード大賞(!)の新人賞を獲得したそうです。
 ひら歌の部分から一気に沸点へと達しそうなこのM1「あなたのブルース」には魔物が棲んでいるに違いありません。
 見事なまでに藤本卓也の凶器狂気の音世界を実現させています。

 2曲目は矢吹健の2枚目のシングルのA面曲、M2「真赤な夜のブルース」です。
 “真赤な夜”とはこれまた不健全極まりない、というよりもあってはならぬ異常な事態です。
 この破滅型の歌い手があたかも血の涙を流しながら歌い上げているかのような鬼気迫る絶唱の凄惨さ。真夜中に蠢く鵺が憑依したかのようです。

 強烈な存在感を放つM3「断絶のブルース」を挟んだ4曲目のM4「忘れさせて」。倒錯した感情が高ぶりエクトプラズムの如く体外へと噴出し、周囲を凍てつかせる戦慄の悶絶歌謡とはこのほかにございません。
 にじる寄るサックスの音色をものともせず、鼻水混じりのうえに自虐的極まりない市川好朗の歌は勝手に絶頂を迎えて果てて行くだけです。
 あまりの表現力に失笑どころか失禁ものでしょう。

 表題がどうしようもなく突拍子もないM5「蒸発のブルース」の場合、のっけから“だ〜ぁめぇ〜”とダメ出しを受けなくてはならいという無茶な1曲です。
 矢吹健が歌う八方塞がりの薄幸さ加減に聴いているこちらがどん底に突き落とされる思いです。

 本盤ではクィーカが軽快にリズムを刻むM6「まぼろしのブルース」佐久間浩二とそれ以上にラテン色の強いM19「まぼろしのブルース」勝彩也とを競演させております。
 この「まぼろしのブルース」こそ日本歌謡界にとって幻のお宝なのではないでしょうか。

 よりによってこの季節、暑苦しいまでの歌声が首筋にまとわりついて来るような前者の灰汁の強さには生きた心地がしません。ファズ・ギターまでねっとりと響いております。
 後者でもゴン太くんが特別出演しているかの如きクィーカの力も存分に借り受けまして、嫌らしさ満点に迫りまくります。

 再び矢吹健による4連打がこれまた嗚咽が漏れ聞こえて来そうな暗黒歌謡なのです。
 健気にも聞こえるM7「負けるもんか」では、男を捕らえようと蜘蛛の巣を張ったような女性の生態が描かれているような気がします。

 一転して口笛を交えた朗らかな曲調のM8「忘れないよ」には逆に薄気味悪さを感じてしまいまして、すっかり藤本卓也の魔力に魅せられてしまいます。
 M10「夜は千の目を持つ」では“人の為と書いて偽りと読むのね”と一撃必殺の超絶フレーズが炸裂しております。

 女性の歌声が映えるM13「恋時計」とM14「夢に咲く花」におきましては、空恐ろしいほどの暗黒歌謡が雪崩を打つ本盤の選曲にあってほどよいアクセントとなっております。
 安らぎます。

 同じ崖っぷち歌謡とは言え、以前に採り上げました『君が欲しい』(1993)にも収録されている“ニュージャージー・ソウル歌謡の名作”っぷりとは似ても似つかぬM16「稚内ブルース」は相変わらず後がない、先がないと孤高のやさぐれ具合です。

 終盤にかけましてもうひと盛り上がりです。
 後に幻の名盤解放歌集ー*テイチク編『ダイナマイト・ロック』(1995)という編集盤で大きく扱われることになる梅宮辰夫が初お目見えです。

 男のシンボルが大活躍する無敵のM17「シンボル・ロック」が抑制の効いたファンキーさで以て貴女に迫ります。
 お前のものは俺のもの、俺のものも勿論俺のものと言わんとばかりのM18「夜は俺のもの」では無類の我がままっぷりを押し通しながら日付を越えて行きます。

 最後に駄目押しのM20「休ませて」で矢吹健が吠えて吠えて吠えまくります。文字通りの激唱と言うほかありません。
 そして、妖しく火花散るような本盤を締めくくるのはM21「あなたのブルース」のカラオケ版という抜かりのなさです。

 今や忘却の彼方へと追いやらたと思いきや、クレイジーケンバンドなどの活躍によって見直される機運にある昭和歌謡のさらなる奥底を垣間見ることの出来る、シリーズ随一の傑作選に違いありません。
 太鼓判を押して差し上げます。

 同じ幻の名盤解放歌集の『スナッキーで踊ろう』(1992)や以前に採り上げた同じく藤本卓也作品集*キング編『君が欲しい』という屈指の編集盤をも凌ぐ完全無欠の1枚です。完璧です。

 通して聴いてみますと体力消耗も著しいとんでもない1枚ですね。滅多に聴くもんじゃありません。ある種の拷問と呼べるのではないでしょうか。

 どこから聴いても藤本卓也作品であり何を聴いても藤本卓也の過剰なまでの世界観が叩き付けられている始末なのです。

More
[PR]
by chitlin | 2007-06-16 22:01 | J-Pop

竹内まりや / Denim (2007)

 6年振りの新作だという竹内まりやの『Denim』(2007)のご紹介です。
 某店のポイントを利用しまして、無料で入手いたしました。(←その代わりと言っては何ですけれど、タワーレコードのポイントが満点にもかかわらず期限切れであることが判明しまして目の前が薄暗くなりました)

e0038994_21205110.jpg

 端から購入する気は毛頭なかったのです。今までに彼女のアルバムもシングルも購入したことがありませんし。
 本作では大半が既発曲やセルフ・カヴァーで占められていますし、これまでの山下達郎の『サンデー・ソングブック』での放送や全曲紹介で以てその内容の大方を押えておりましたので。

 ただ、NHKが放送した『SONGS』第1回目(竹内まりや出演)を思い返してみたり。

 FMから流れて来るM12「人生の扉」を耳にしているうちに。

 路傍先生の購入リストを拝見してみまして。

 通販サイトで“廃盤”という殺し文句を目の当たりにすると。

 初回限定『Vintage Denim』というボーナス・ディスクに釣られてしまい。

 収録曲には既視感がありますしボーナス・ディスク収録曲の編曲には抵抗を感じてしまうのですけれども、物欲が勝りました。

 それ以上に、M12「人生の扉」の歌詞が心に染み入るんですよ。私自身は30代半ばではあるんですけれどグッと来ちゃいます。

 大変に素晴らしい歳の取り方をされていますね。
[PR]
by chitlin | 2007-05-25 21:23 | J-Pop
 その筋の愛好家でさえ溜飲を下げた怪盤シリーズ、“カルトGSコレクション”において屈指の危険度を誇るクラウン編の第2弾をお送りします。
 未だに細々と発売されています“カルトGSコレクション”にあって、数少ない手持ちの中からいちばん最初に選ぶべくはこの『クラウン編 Vol.2』しかないでしょう。

e0038994_12121100.jpg

 先月下旬にGS研究家の黒沢進氏がお亡くなりになったそうです。この“カルトGSコレクション”こそは氏の偏愛と造詣の深さが実を結び、今日においても有効な編集盤たらんとしている訳です。

 昭和歌謡の徒花(実際にはそんな程度では済まされないのですけれど)と言えば、幻の名盤解放同盟で扱われるようなものが挙げられる訳ですけれども、この “カルトGSコレクション”にしても相当な宿命を背負い込んでしまっていると見受けられます。
 その当時から顧みられることもなく歴史の隙間に貶められ、堅く扉を閉ざされていたであろうこの手の音が我々にとって取っ替えの利かないものへと昇華していることは紛れもない事実なんです。

 なかなかに狂騒的な曲調と“シェビデビ”というフレーズが印象的なM1「シェビデビで行こう」をぶちかまし、M8「マリアンヌ」とM14「恋の天使」とを甘くロマンティックに歌い上げるザ・プレイボーイはそのグループ・ショットが本CDのジャケットにも使われているのですけれども、そんな彼らを差し置いて最恐のカルトGSと謳われるのがザ・レンジャーズなんです。

 ザ・レンジャーズの楽曲は合計3曲が収録されていますが何と言っても必殺の悶絶ガレージ、M2「赤く赤くハートが」に止めを刺します。
 ぺランぺランに薄っぺらい演奏を気に留めもせずに突っ走り、その身を削るように捨て鉢となって歌うその破滅的な痙攣ヴォーカルには戦慄すら覚えます。
 たぎる想いやら鬱積した感情が一気に噴出し自らが自らの息根を止めるかのような激唱っぷり。そんな無鉄砲さは天晴れとしか呼びようがありませんよ。
 これこそ向かうところ敵なし、唯一無二のカルトGSの頂点を極めておりますです。

 三番手に控えていますのは M3「サハリンの灯は消えず」にM9「さよならサハリン」と何はなくともサハリン、サハリンと執拗に迫るザ・ジェノヴァです。
 殊更にロシア民謡ということも異国情緒が漂うこともなく、紛れもない大和魂で以て一本筋の通った歌と演奏を繰り広げていますよ。勿論、イタリアとも何ら関係はありません。

 続いてスコットランド風のスカート姿も眩しいザ・クーガーズによるM4「アフロデティ」の疾走感に思わず痺れてしまいます。歌の内容とは裏腹に爽快なガレージ・サウンドが思いの外に耳にこびり付きまして堪りませんね。
 同じくザ・クーガーズのM10「好きなんだ」では思いの丈が瞬間的に爆発する1曲です。何だか胸のつかえがおりるような内角直球攻めが肝ですね。

 老舗グループの田辺昭知とザ・スパイダーズは王道のカヴァー曲、M5「ワイプ・アウト」を余裕でかましてくれます。
 また、映画主題歌のM18「青春ア・ゴーゴー」にしても実に安定した演奏を聞かせてくれます。

 当然とも言うべき実力派、ミッキー・カーチスとザ・サムライズに割り当てられたのはM12「太陽のパタヤ」です。
 これは2枚目のシングル曲で、悠然としたジャズ・ボッサにしてエキゾティックかつラウンジな感覚が発揮されていまして神秘的ですらあります。

 GS→ガレージ・サウンドという図式が成立するのを超えてロック・バンドとして完成していると思われるのがザ・バーンズでしょう。
 『クラウン編 Vol.1』ともども本盤に収録された2曲、M6「キャン・ユー・シー・ミー」とM20「スカイ・パイロット」はライブ音源なのですけれど、本格派と呼んでは失礼に当たるのではないかと感じるほどの高い完成度を保ちつつ、紫煙漂うサイケデリックな感覚をも纏っております。

 英語表記では“Sixties Japanese Garage / Psych Rarities”と銘打たれた編集盤にあって、無軌道で向こう見ずな全20曲が収録されています。

More
[PR]
by chitlin | 2007-05-17 01:21 | J-Pop