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by chitlin

タグ:幻の名盤解放歌集 ( 18 ) タグの人気記事

おじさまいや? (1997)

 本作は、大映レコード野望編『夜を抱きしめたい』(1997)に続く幻の名盤解放歌集*大映レコード蒸発編に当たる『おじさまいや?』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 アナログのレコード盤よりも実は業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 解説にもある通り、中年紳士との援助交際を連想させる怪演、M1「おじさまいや?」とそのB面曲のM2「キッスしてっ」はどちらも秘め事などには感じられませんね。
 本盤のジャケット写真として使われているようにあっけらかんとした不釣り合いな画面が逆に生々しいとも言えるのです。

 そんな援助交際に勤しむ麻里エチコがM4「くたばれ野郎ども」におきまして、その本性を晒します。
 威勢良く啖呵を切る女番長歌謡がいきり立った中年男性たちを一気にねじ伏せます。

 回転数をいじった嘆息がこの世の終わりを感じさせる M5「浪人ブルース」については、これが世に出たこと自体、驚愕に値するのではないでしょうか。
 一般向けという枠組みを軽々と無視したテープ編集が絶妙に奏功しておりません。
 それでも、この厭世感は私、chitlinの18歳の頃と重なりますね。

 ザ・トーイズの2曲がさらに本盤の前半を盛り上げます。
 M6「お宮さん」では“しづごいぜ〜”とヴォーカリストがインドネシア出身ならではの歌い回しを楽しむことが出来ますよ。摩訶不思議なグローバル感覚を宿した希有なGSですね、これは。

 M7「じょんがらゴーゴー」におきましてはエレキが脇目も振らずに走っています。リズム隊も共に突っ走る軽快過ぎるダンス・ナンバー。
 じょんがら万歳!

 これまた解説にもある通り、M3「青春笠」で聴ける演奏がザ・トーイズそのもの(←実際には異なるそうです)なのですよ。表題そのままの青春歌謡丸出しの様子が少し痛々しいものです。

 所謂、ひとりGSと呼べるM9「泣きべそマリア」も前半の聞きどころですね。
 芯が通っていながらも、色香たっぷりの歌唱が殿方の胸を焦がして行くことでしょう。

 続くM10「真夜中の遊園地」を歌うはまたしても麻里エチコ。
 女番長からウブな少女へと早変わりを演じるように、変幻自在の彼女による舌足らずな歌がうら寂しさを倍増させることでしょう。

 それにしても、先のM1「おじさまいや?」とM2「キッスしてっ」のシングルが後から発売されていたという事実!女性という生き物はいったい・・・。

 ちっとも冒険する気に聞こえない調子のM11「冒険しちゃおかな」など女性ヴォーカルが続きまして(ガール・ポップとは言い難し)。

 大人の女の雰囲気が独りでに滲み出すM14「夜霧の中でさようなら」、実に良い喉の持ち主、島譲二のM15「恋の落日」で以て後半も盛り上がって来る訳ですよ。

 M16「札幌ブルース」にM17「涙のラブレター」、M18「蒸発」を披露する久保内成幸とロマネスク・セブンにつきましては、相当実力のあるグループとお見受けします。

 幻の名盤解放歌集*ビクター編の『渚の歓喜(エクスタシー)』(1992)にも収録されていますけれど、ムードコーラスの醍醐味を存分に味わうことが出来る本格派です。ハワイアンが苦手であることが判明した私、でさえ恍惚の表情を浮かべてしまうくらいの佳曲群です。

 見事に1960年代末の音源で固められた大映レコード野望編にありまして、妙に映像的な音作りが本盤の特徴ですよ。

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by chitlin | 2007-09-30 23:49 | J-Pop
 本作は、幻の名盤解放歌集*日本コロムビア編に当たる『サヨナラは出発のことば』です。安田明とビート・フォークを大々的に扱った編集盤です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 政治家とカネの絶妙な関係よりもはるかに業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 前述の通り、『サヨナラは出発のことば』(1975)というアルバムにシングル曲を追加した安田明とビート・フォークの音源が軸を成しています。

 そもそもは『ホイサッサ』(1973)というシングル盤でデビュー、幻の名盤解放歌集*東芝編『男と女の炭坑節』(1994)にB面曲の「男と女の炭坑節」ともども収録されているそうです。
 何を隠そう、把握している限りその東芝編の『男と女の炭坑節』こそ幻の名盤解放歌集におきまして唯一所有していないCDです。(あっ、『絶唱!野坂昭如 マリリン・モンロー・ノー・リターン 』(1999)も持っていませんです)

 ある意味、フォークとソウル・ミュージックとの融合を目論みファンクに転んだ、ようなところがあるようですね。
 それでもこのグループ、どんな手本があるにせよ至極アコースティックなファンキーさを持ち合わせていまして純和風と言いましょうか和式便所風と言いましょうか。
 ブックレットの解説に倣ってみますと築40年木造アパート風呂なし共同トイレ四畳半ファンクといったところなのです。

 そうです、彼らの音楽が“貧しさ”という言葉から逃れらないことは崖っぷち清貧ファンク歌謡であるM3「或る青春」に集約されています。
 目頭が熱くなるのを通り越して嘆息が出てしまいますよ。

 一方でM9「愛の血液合せ」におきまして、血液型占いで以て役に立ちそうにない恋愛指南を延々とぶちまけるのはご愛嬌ということで。

 『サヨナラは出発のことば』(1975)発売後のシングル曲、M11「ユムラのオババ」にはどう対処して良いのやら。
 「尾崎家の祖母」まりちゃんズほど突き抜けたところに欠けますので当然の如く面白味に欠けるのです。

 こう言っては何ですけれど、主軸の安田明とビート・フォークよりもむしろそのほかの収録曲の方が興味深いのです。

 駄目出しを連発するジュン池内が雄々しく歌い上げるM13「男と女」はビッグバンドを率いて“どうせこの世は男と女”と啖呵を切る辺り、極めて男前度が高い1曲ですよ。

 絶句するほかない神経症的朗読歌謡のM15「おはよう・・・海!」で独り相撲ひとり芝居を披露しています麻上洋子が『宇宙戦艦ヤマト』の森雪役だということなど目から鱗です。

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by chitlin | 2007-09-08 23:47 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集*日本コロムビア編に当たる『ニャオニャオ甘えて』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 国民の不安を煽りまくる公的年金問題よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 それでは駆け足で追い掛けてみましょう。
 ちっとも甘えたいと思えないM1「ニャオニャオ甘えて」は、“ニャオニャオ”と呑気なコーラスがたなびく異色のお色気歌謡です。
 過度に熟した民悦子の歌唱がこれまた気色悪い変幻自在なのです。

 表題の通りにSM歌謡のM2「鞭で打たれて愛されて」の場合、倒錯した内容の割には実に爽快感溢れる歌唱が印象的です。
 歌っている池亜里沙自身がことのほか気持ち良さそうであることは勿論なのですよ。

 無駄に暑苦しいエレキ歌謡の M4「悲しみを蹴飛ばせ」では、やはりその捨て鉢加減はもとより押しの強さにすかさず辟易してしまうほどです。
 歌っている港孝也、根は良さそうな人のようなんですけれどね。

 M5「パッション」は表題とは裏腹に女性に対する未練がましいすがりつくような粘着質に無性に腹が立って来ます。
 そして、なぜだか子門真人ばりに歌い上げるムード歌謡とも呼べるM6「さすらい未練町」にはむせ返るほどの哀愁が充満しています。

 やはり、こちらもあまりその気になれそうにないM7「甘えていいわ」ですけれども、叶ひろ子の塩辛い歌声が貴方の背中にしっかりと爪痕を残して行きますよ。

 M8「愛そして命」は本盤収録のM14「天国への階段」と双璧をなすがけっぷち歌謡です。
 眼も霞んで来るような締念の霧に包まれてしまいそうです。

 中盤を締めるのは、あの「スナッキーで踊ろう」で以てその名を知らしめた海道はじめのM9「めぐり逢えても」です。
 渦巻くオルガンと風雲急を告げるかのようなストリングスの調べが丁寧で優しい歌声を際立たせております。
 ある意味、安心して聴くことが出来ますね。

 ベースラインが意外と心地良いブラス・ロック風味が特徴のM12「波」については、芯の通った歌唱にも好感を持てます。
 スキャットも麗しいM13「若い天国」は歌詞の中に“サイケデリック”と出て来る通りのドラッグ・ソングです。(←話半分ということで) 

 天国繋がりで次のM14「天国への階段」では心ここにあらずといった風情が恐ろしい1曲なのです。
 歌うそばからお迎えが来そうな深い締念が漂います。ある意味、「Stairway To Heaven」Led Zeppelinよりも「天国への階段」という表題がしっくり来るんです。
 これは拾い物ですね。

 続くM15「ジャズ・ロック」は『エロス+虐殺』(1970)という映画のサウンドトラック盤からエイプリル・フールの演奏です。はっぴぃえんどの前史を飾るグループのひとつですね。
 これは臭いますね。強烈なアシッド臭が鼻を突きます。オルガンの音色がまるで切れ目のないオーロラのように舞い上がり、聴き手の三半器官を揺さぶります。
 う〜ん、アート!(←は、恥ずかしい)

 前回と比較してしまいますと、相手が相手だけにうっかり印象が薄いだなんて判断をしてしまう恐れがあるかも知れません。
 もっともそれは早計でありまして、人の心の奥底に巣食う真っ黒な欲望が跋扈していることが本作からも痛いほどに伝わって来るのです。

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by chitlin | 2007-07-05 00:54 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集ー藤本卓也作品集*テイチク編に当たる『真赤な夜のブルース』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 空前絶後の業の深さを誇る歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 このシリーズの本丸、いやさ歌謡曲の核心を絶妙に突き崩してしまった“夜のワーグナー”こと藤本卓也の魂が込められた全21曲。白昼堂々と聴くには憚れるほどの魔力を持ち合わせております。

 まずは延べ9曲が収録された矢吹健という歌い手。
 冒頭のM1「あなたのブルース」がデビュー曲にもかかわらず大ヒットとなり、日本レコード大賞(!)の新人賞を獲得したそうです。
 ひら歌の部分から一気に沸点へと達しそうなこのM1「あなたのブルース」には魔物が棲んでいるに違いありません。
 見事なまでに藤本卓也の凶器狂気の音世界を実現させています。

 2曲目は矢吹健の2枚目のシングルのA面曲、M2「真赤な夜のブルース」です。
 “真赤な夜”とはこれまた不健全極まりない、というよりもあってはならぬ異常な事態です。
 この破滅型の歌い手があたかも血の涙を流しながら歌い上げているかのような鬼気迫る絶唱の凄惨さ。真夜中に蠢く鵺が憑依したかのようです。

 強烈な存在感を放つM3「断絶のブルース」を挟んだ4曲目のM4「忘れさせて」。倒錯した感情が高ぶりエクトプラズムの如く体外へと噴出し、周囲を凍てつかせる戦慄の悶絶歌謡とはこのほかにございません。
 にじる寄るサックスの音色をものともせず、鼻水混じりのうえに自虐的極まりない市川好朗の歌は勝手に絶頂を迎えて果てて行くだけです。
 あまりの表現力に失笑どころか失禁ものでしょう。

 表題がどうしようもなく突拍子もないM5「蒸発のブルース」の場合、のっけから“だ〜ぁめぇ〜”とダメ出しを受けなくてはならいという無茶な1曲です。
 矢吹健が歌う八方塞がりの薄幸さ加減に聴いているこちらがどん底に突き落とされる思いです。

 本盤ではクィーカが軽快にリズムを刻むM6「まぼろしのブルース」佐久間浩二とそれ以上にラテン色の強いM19「まぼろしのブルース」勝彩也とを競演させております。
 この「まぼろしのブルース」こそ日本歌謡界にとって幻のお宝なのではないでしょうか。

 よりによってこの季節、暑苦しいまでの歌声が首筋にまとわりついて来るような前者の灰汁の強さには生きた心地がしません。ファズ・ギターまでねっとりと響いております。
 後者でもゴン太くんが特別出演しているかの如きクィーカの力も存分に借り受けまして、嫌らしさ満点に迫りまくります。

 再び矢吹健による4連打がこれまた嗚咽が漏れ聞こえて来そうな暗黒歌謡なのです。
 健気にも聞こえるM7「負けるもんか」では、男を捕らえようと蜘蛛の巣を張ったような女性の生態が描かれているような気がします。

 一転して口笛を交えた朗らかな曲調のM8「忘れないよ」には逆に薄気味悪さを感じてしまいまして、すっかり藤本卓也の魔力に魅せられてしまいます。
 M10「夜は千の目を持つ」では“人の為と書いて偽りと読むのね”と一撃必殺の超絶フレーズが炸裂しております。

 女性の歌声が映えるM13「恋時計」とM14「夢に咲く花」におきましては、空恐ろしいほどの暗黒歌謡が雪崩を打つ本盤の選曲にあってほどよいアクセントとなっております。
 安らぎます。

 同じ崖っぷち歌謡とは言え、以前に採り上げました『君が欲しい』(1993)にも収録されている“ニュージャージー・ソウル歌謡の名作”っぷりとは似ても似つかぬM16「稚内ブルース」は相変わらず後がない、先がないと孤高のやさぐれ具合です。

 終盤にかけましてもうひと盛り上がりです。
 後に幻の名盤解放歌集ー*テイチク編『ダイナマイト・ロック』(1995)という編集盤で大きく扱われることになる梅宮辰夫が初お目見えです。

 男のシンボルが大活躍する無敵のM17「シンボル・ロック」が抑制の効いたファンキーさで以て貴女に迫ります。
 お前のものは俺のもの、俺のものも勿論俺のものと言わんとばかりのM18「夜は俺のもの」では無類の我がままっぷりを押し通しながら日付を越えて行きます。

 最後に駄目押しのM20「休ませて」で矢吹健が吠えて吠えて吠えまくります。文字通りの激唱と言うほかありません。
 そして、妖しく火花散るような本盤を締めくくるのはM21「あなたのブルース」のカラオケ版という抜かりのなさです。

 今や忘却の彼方へと追いやらたと思いきや、クレイジーケンバンドなどの活躍によって見直される機運にある昭和歌謡のさらなる奥底を垣間見ることの出来る、シリーズ随一の傑作選に違いありません。
 太鼓判を押して差し上げます。

 同じ幻の名盤解放歌集の『スナッキーで踊ろう』(1992)や以前に採り上げた同じく藤本卓也作品集*キング編『君が欲しい』という屈指の編集盤をも凌ぐ完全無欠の1枚です。完璧です。

 通して聴いてみますと体力消耗も著しいとんでもない1枚ですね。滅多に聴くもんじゃありません。ある種の拷問と呼べるのではないでしょうか。

 どこから聴いても藤本卓也作品であり何を聴いても藤本卓也の過剰なまでの世界観が叩き付けられている始末なのです。

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by chitlin | 2007-06-16 22:01 | J-Pop

若さでムンムン (1993)

本作は幻の名盤解放歌集*キング編に当たる『若さでムンムン』(1993)です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 失恋によって負った傷よりもはるかに深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 ロカビリー調の表題曲、M1「若さでムンムン」や三島由紀夫が歌う渋味が抜群のM3「からっ風野郎」を差し置いて前半の目玉は梅若クニコの2曲です。

 カントリーとドゥワップのコーラスが掛け合わさったうえに東北弁のラップで捲し立てるM5「バイバイ!狂育ママ」の気概と来たら、これ以上ないものですよ。
 続くM5「秋田荷方節」は英語による口上から始まり、三味線とタブラが絡む謎の異色作です。と思ったらその実、旅行先のインドでタブラ奏者とお手合わせした成果だということです。

 中盤からは歌謡曲に欠かせない要素のリズムものやムードものが続きます。ラテンのM7「ボンゴ天国」、ニューリズムのM8「東京キカンボ娘」とM9「ドドンパ舞妓はん」などが聞き物です。  
 M8「東京キカンボ娘」を歌う木の実ナナにはやはり得も言われぬ溌剌としたものがあります。

 そのほかに目立つのは、きっちりと作り込まれたアイドル歌謡のM14「青い渡り鳥」に破れかぶれなM15「心臓破りの恋」(!)。
 更に追い討ちをかけるように続く、ちっともローックぢゃないダークダックスのM16「小唄ロック」や意気込みの割には軽い歌い口のM17「やったるで!」といったところでしょうか。

 最後を締めるのはエレキ・ギターの神様、寺内タケシです。
 特にM19「羅生門」では流石に大御所らしい壮大なスケール感を湛えております。
 何かこう神通力のようなものが確実に働いておりますね、これは。冒頭からサイケデリックな感覚さえ漂う逆回転ギターに導かれて、ひとつの小宇宙が形成されて行く様子を見せつけられているかのようです。

 強者揃いの幻の名盤解放歌集にあって、本盤がちと薄口なのはやむを得ないことでしょう。そうは言っても、ちょっとやそっとでは聞くことの出来ない歌謡曲がズラリと並んでいますしね。

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by chitlin | 2007-04-25 23:49 | J-Pop

君が欲しい (1993)

 本作は幻の名盤解放歌集ー藤本卓也作品集*キング編に当たる『君が欲しい』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 愛する者を自らの手で殺めてしまうのと同じくらい業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 藤本卓也と言えば“夜のワーグナー”や“闇の帝王”と呼ばれていますけれど、本盤の帯には“歌謡界のカール・ゴッチ”と謳われています。  
 作詞作曲は勿論、編曲についても多く手掛ていまして、徹頭徹尾ハードコアな藤本卓也作品集でございます。 

 得も言われぬ胸騒ぎを起こさせるシンセサイザーの不気味な音色から導かれるM1「君が欲しい」では歌い出しから“君の胸にメスを入れて 裂いて開いて にくい悪魔 つかみ出した 夢を見たけど”と始まりまして、“いっそ君が 死んでくれたら 君はぼくの ぼくだけの ものになるけど”などと続きます。
 ラオウのユリアに対する想いか、はたまた『愛の流刑地』でしょうか。

 それにしても、魔界にでも足を踏み入れてしまったのかと思わされます。もはや、絶句です。

 本盤のジャケット・デザインはこのM1「君が欲しい」のシングル盤のものを加工したというのですから度肝を抜かれます。

 異様な電波を発する佐々木早苗の魂が刻み込まれているのが、M2「最後の人」です。
 特にサビでは時空間を歪めるかのように歌い上げております。想像を遥かに超える歌唱力です。

 同じく佐々木早苗のM4「恋の味」は意外にもフロア映えする1曲です。
 歌詞の上でThe Doorsの「Light My Fire」と「Touch Me」とが合わさったようなダンサーです。

 続く紀本ヨシオによる3曲について、一聴して曲調が地味ながら歌詞に込められた情念の質量が人一倍高いのです。

 軽快なエレキ・インスト、M9「戦場の星」の歌入り版がM10「戦場の星」でして、バンジョーの音がしみったれた風情を醸し出しています。

 M11「恋の人魚姫」には東洋音階を忍ばせつつ、切ない恋を歌わせています。
 M12「窓ぎわの女」もザ・キャラクターズによる楽曲です。恐ろしく縁起の悪い歌詞に綺麗なコーラスを乗せるという荒業が目を惹きます。

 藤本卓也作品における小道具の定番、クィーカが活躍するM13「雨の連絡船」では小節が転がるごとに情念が渦巻く怨歌の如き1曲です。

 原みつるとシャネル・ファイブの3曲について、解説にある“ニュージャージー・ソウル歌謡の名作”というひと言には目から鱗です。
 そう言えばCarnival Recordsの音源がまとめられた編集盤を持っていることを思い出しました。The Manhattansのほかにも優れたグループが競い合っています。

 また、藤本卓也作品集のテイチク編、『真赤な夜のブルース』(1993)にも収録されていますM18「稚内ブルース」は、ご当地ソングとしてはいささかはた迷惑とさえ感じられます。

 最後を締めるM19「島の乙女」にて再び林和也が登場します。
 “ヤンヤンヤンヤヤンヤヤーンヤーン”と始まる冒頭のファルセットで魂を抜かれてしまいますが、ひら歌からこちらは血反吐を吐くが如く歌うM1「君が欲しい」とは対照的に意外と度量の大きさを示していますし、ソウルフルですらあります。

 これがM1「君が欲しい」のB面曲だというのですから、それだけで身震いが止まりません。

 シリーズ屈指の霊気が立ちのぼり、空恐ろしいほどの暗黒歌謡が目白押しの1枚です。

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by chitlin | 2007-03-22 00:34 | J-Pop

夜のメカニズム (1996)

 本作は幻の名盤お色気キューティ・ポップ解放歌集*ポリグラム編という変則的な1枚、『夜のメカニズム』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 政治とカネが孕む問題よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 冒頭に置かれた操洋子の4曲のうち、見事に浮き上がる軽快なラテン歌謡のM3「太陽の女」以外は、さすが“夜のワーグナー”藤本卓也による作編曲という贅沢なものです。
 うらぶれた女という生き物を描いたM1「蝶の踊り」にM2「ゆうべの貴方」、そしてM4「真心で愛して」で目の当たりにする大人の雰囲気満点の操洋子の歌声が轟く3曲は、まさしく業の深いお色気歌謡たらんとしております。

 何気なくファズるM5「プルプル」は世間知らずを装ったようなハニー・牧の1曲です。
 このM5「プルプル」からは『キューティ・ポップ』編に突入しまして、しばらくの間かしましいガール・ポップが続きます。

 これまた何ともやさぐれた田村エミによるM6「一人だけの涙」のアラビア音階でのけぞってしまった直後、別人のような優等生歌唱のM7「白い雲ポッカリ」に拍子抜けを喰らいます。見事なまでの豹変ぶりです。

 M8「ふたつの影」の場合、一聴して立花京子を勝手に清純派と思いきや歌詞が意外とえぐいのを良いことにオートハープが若干のサイケ風味を醸し出す一方、西千曲がこの一連の流れを輪をかけて捻り潰そうとする民謡調のM9「ゴーゴー娘」で一服となります。

 今回の『キューティ・ポップ』編の中で出色の出来と思われるのがM10「恋は片道切符」です。歌い方に若干古さを感じさせるもののホーンが容赦なく切り込んで行く豪勢な編曲が白眉でしょう。

 自然と“ハートがドキドキ”して来る2枚目のシングルA面曲のM12「チャカブン」と比較して江美早苗のデビュー曲のM13「涙でかざりたい」は随分と大人びたガール・ポップです。
 その一方で阿久悠作詞のM13「恋のロリロリ」では存分にイエイエぶりを発揮するという完成度の高いフレンチ歌謡を披露しています。
 表情豊かな三段活用です。

 「I Can't Get Satisfaction」The Rolling Stonesそのままの出だしからしてシタールが妖しく響くM14「ランブリンマン」には驚愕の事実が。嘘か真か、解説によれば日本で最初にシタールが使われた楽曲だそうです。

 何とも淫靡な表題を持つM15「夜の味」で以て再びお色気歌謡に引き戻らされます。

 元々はお色気女優ではなかったという荒砂ゆきがこれまた希有な破壊力を備えて貴殿に迫りますが、甘く囁くこのM15「夜の味」と打って変わってM16「夜のメカニズム」というのがM4「真心で愛して」など比較にならぬほどにおどろおどろしい1曲なのです。
 下手をすれば喰われてしまいそうです。身震いすら起こさせます。

 語りが入るM17「いつまでも、いつまでも」は荒砂ゆき自身が作詞を手掛けています。

 達観したM19「私のきらいなもの」を歌うは沢久美です。この楽曲のシングルA面曲が、幻の名盤解放歌集のポリドール編『お願い入れて』(1993)に収録されています「ミミの甘い生活」でして、歴代のお色気歌謡の中で頂点と目されるほどです。
 M19「私のきらいなもの」自体は颯爽としたボサノヴァではあります。

 雰囲気は良いのですけれど少々古臭さが漂うM21「切ない恋のブルース」に続くのは、定番とも言うべく男女間の大人の事情が交錯するM20「電話」も意外と聞き物です。

 オルガンが隠し味で音の作りもしっかりとしたM22「赤い夕日」ではハスキー・ヴォイスが唸りを上げるのが印象的です。
 解説にある通り『キューティ・ポップ』と『お色気歌謡』の境界線に股がっているというのは言い得て妙です。

 以上のように相反する『キューティ・ポップ』編を抱き合わせた変則的な内容とは言え、大変密度の高い70分18秒なのです。

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by chitlin | 2007-02-07 00:48 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集*東芝編に当たる『からっぽの青春』、串田アキラの単独盤です。“串田アキラの爆発するソウル歌謡”という副題そのままの焦げるように熱い1枚です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 ナイアガラ大瀑布の滝壺の深さよりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 串田アキラと言えば。自分にとっては勿論後付けではありますが、1980年代前半に集中する特撮ヒーローものやアニメ番組の主題歌でお馴染みの大歌手という訳です。

 例えば『太陽戦隊サンバルカン』に『宇宙刑事ギャバン』とそれに続く宇宙刑事シリーズのほかにはアニメ『戦闘メカ ザブングル』や『キン肉マン』といったところです。
 また、富士サファリパークのCMソングについて、韓国出身の元同僚によりますと来日後今でもいちばん衝撃を受けた歌であるとのことです。

 小学生だった当時、誰が歌っていようと当然の如く一切お構いなしに虚構の世界へと没入していた訳です。それから四半世紀を経てしがない会社員になってしまっている現在、巡り巡ってその熱い歌心が満載の本盤が手元にあり続けるというこの事実。運命と言ってよろしいのかも知れません。

 デビュー曲のM1「からっぽの青春」が発売されたのが1969年でして、NHKの『ステージ101』ヤング101の一員としても活躍したということですから相当な経験を積んで来たのでしょう。太く力強い歌唱の連続に圧倒されること間違いなしの全18曲です。文字通りに“魂の歌”、ソウル歌謡が爆発しております。

 その渋味すら感じさせる迫力のM1「からっぽの青春」からして彼の器の大きさを窺い知ることが出来ます。本盤の表題曲だけありまして、熟成したサザン・ソウル風味のバックトラックと相俟って、虚しさが煮え立つように歌われます。 

 前半での山場としては筒美京平作曲のM6「純愛の唄」を挙げられます。歌い出しから盛り上げる熱い歌い口にうなされるも、一気に突き抜ける2分余りなのです。
 更には続くM7「愛の世界」によってだめ押しされ、溢れ出す慈しみに胸が締め付けられること必至です。

 終盤にかけて一段と盛り上がるのは英語詞を交えたM17「あやまち」と円熟味を増したM18「しあわせの限界」に依るところです。実にツボを押さえた締めくくりです。

 楽曲としていちばん耳に残るのが樋口康雄作曲というM14「愛の記憶」でしょう。こう胸の透くような滑らかな旋律と脂ぎった歌が混じり合い言葉を失うほどの逸品に仕上げられています。ソウル歌謡のど真ん中にあって、華麗な一面を垣間見せてくれます。

 まさにソウル歌謡の王者、串田アキラが雄大に歌い込む姿を余すところなく捉えた好盤です。
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by chitlin | 2006-12-30 23:57 | J-Pop
 本作は幻の名盤解放歌集*ビクター編に当たる『ドラマチック・お色気・ブルース』です。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 バブル崩壊後の経済状況の落ち込みよりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 のっけから『渚の歓喜(エクスタシー)』(1992)にて大々的に扱われた應蘭芳によるM1「ドラマチック・ブルース」が炸裂します。咽び泣くサックスを背に、その火照った身体をくねらせまくっています。
 ここまで来ると訳もなく怪物のように思えてなりません。

 さて、気を取り直しまして。

 間髪入れずにプティ・マミがM2「Baby Doll」とM3「Girl Friend」を連射、このデレデレぶりには被弾すること必至です。プティ・マミひとりの小芝居が妙に生々しいために、単なる疑似体験以上の手応えを感じさせてくれます。(←我ながら気色悪い)

 そんな興奮冷めやらぬ中、競演の経験もあるサンドラ・ジュリアンと池玲子がそれぞれにM4「サンドラの森」とM5「変身」で以て股間を直撃。

 M4「サンドラの森」は『セクシー・ポエム』(1972)に収録されている、比較的爽やかな1曲です。
 『恍惚の世界』(1971)にも収録されていないM5「変身」は雰囲気も抜群、演奏も非常に熟れたものですので大満足です。

 このなりふり構わない前半の流れには圧倒されるしか術がありません。

 中盤に来てM9「二つのコーヒー」、M10「二杯目のコーヒー」そしてM11「三杯の珈琲」という心憎い演出によってアルバム全体の構成に起伏が生じて、聞き手を飽きさせることがありません。

 M15「蝶々」やM16「キチ・きち・吉」となると途端にきな臭さが漂いますが、それ以外の収録曲はと言えば概ね水準の高いお色気度を誇っています。

 ビクター編のお色気歌謡集も今回で2枚目となりますが、その殺傷能力が低下するどころか輪をかけて貴殿を悩殺に至らしめること確実です。

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by chitlin | 2006-11-23 21:45 | J-Pop

シューベルト物語 (1993)

 本作は幻の名盤解放歌集*テイチク編に当たる『シューベルト物語』です。“名盤解放発売1周年記念”盤でもあります。

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 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 タンスの後ろの5円玉に手が届かないくらい業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 表題曲のM1「シューベルト物語」を“夜霧の一人通訳歌謡”とは上手く言ったもので、謎のPL学園英語教師であるニッキーが特異な世界を描いています。
 情緒感たっぷりの甘い調べに荘厳なストリングスもよく映えています。

 強烈なR&B歌謡として猛威を振るうM2「愛の絶唱」は、太子乱童のデビュー曲にして本作最大の目玉であると言えましょう。
 サビで突如猛り狂うファズる喉が全開するも、大サビにて何事もなかったかのように元の浪々とした歌唱に転じるという極めて破天荒な1曲です。

 のどかな任侠歌謡M3「モナリザ仁義」とは逆に深刻な内容に相反する颯爽とした社会派歌謡M4「公害ブルース」の場合、こんなにのどかでは困ります。

 話題騒然のM6「ダイナマイト・ロック」と来れば、出だしからオートバイのV8エンジン音が吹きすさび、カスタネットの音が軽快に打ち鳴らされることから大いに煽られます。
 ブラス隊とともに男気溢れる辰兄いの熱い想いがほとばしる切った張ったの爆走ロックです。

 M11「ほんのはずみさ」には、グレート宇野という名に釣り合わないほどに明朗な歌唱に独特のものがあります。“ほんのはずみさ すべてこの世の中は”などと歌われ、何やら形而上学的な臭いも充満しています。

 寝た子を起こすM12「男のマーチ」というけれんみのない男根讃歌以降、お色気歌謡がいくつか続きます。

 後に幻の名盤解放同盟によってまとめて解放された内田高子のM13「噂の恋」で聞ける堂に入った歌いっぷりには思わず舌鼓を打つほかありません。
 全身を舐め回されるような錯覚さえも頭をもたげて来るほどです。

 時アリサがM14「女のときめき」において、過剰な粘着質で以て男どもを一網打尽にしてしまうのに続き、イレーヌ和田の舌足らずぶりが発揮されるM15「DUBA LA BA LOU」という流れは本作の白眉です。

 また、同じくイレーヌ和田によるM16「愛のほのお」についてはラテンの要素がそうさせるのでしょうか、少々下品とも言えるガール・ポップとして胸を焦がしてくれます。

 佐久間浩二によるM17「暗い港」、さらにはM18「怨歌」となると絶望の淵でバケツを両手に立たさせれている気持ちになります。暗い、とにかく暗い内容を比較的朗らかに歌っていることが救いでしょうか。

 流石のテイチク・レコード音源集です。混沌とした中にもきらりと光る昭和歌謡のえげつなさ(←何のこっちゃ)が際立っています。

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by chitlin | 2006-10-20 00:55 | J-Pop