Fun While It Lasted... (1990)
2006年 05月 17日

Sandy McLeanやThe PastelsのStephen PastelがShop Assistantsのレコードを発売するために立ち上げたのが、この53rd & 3rd Recordsです。
“友人のバンドは素晴らしいのにどこもレコードを出してくれない”という理由からだそうです。
ただし、そんなありふれたインディー精神で終わらなかったのが、このレーベルが今もなお愛されて止まない肝所です。1980年代後半に下積みを経た所属バンドは下記のように心機一転、新たな道へと踏み出すことで夢を果たします。
・The Boy Hairdressers → Teenage Fanclub
・The Vaselines → Eugenius
・The Groovy Little Numbers → Superstar
・Talulah Gosh → Heavenly
・BMX Bandits ≒ Duglas T. Stewart
さしずめ、惑星直列並みの奇跡的な邂逅です。
続々と繰り出される稚拙な歌の数々が、実は1990年代初頭に百花繚乱のごとく噴き出した優良ギターポップの兆しであったことに乾杯です。
M3「E102」はカズーの合奏も楽しいBMX Banditsのデビュー曲です。
前身のPretty Flowers時代をも含め、その後に分派を輩出したことから“グラスゴー青年団”の起源といった具合です。
男女2人のユニットによる M7「You Make My Head Explode」は頭ひとつ抜けた存在です。完成度の高さがひと際目立ちます。
The Groovy Little Numbersのデビュー・シングルからの表題曲です。
3曲も収録されたTalulah Goshは当時から既に安定した実力を見せ、着実にリリースを重ねていることが判ります。
M4「Steaming Train」とM12「The Girl With The Strwaberry Hair」での疾走感には堪らないものがありますが、極めつけはやはりM8「Talulah Gosh」です。
ドラマーのMatthew Fletcher作という変わり種ですが、教会オルガンが被さる終盤で盛り上がりを見せるコーラス・ワークに心を奪われっ放しです。彼らの楽曲の中で何回となく聴いた大好きな1曲です。
素人臭さ丸出しのM6「Son Of A Gun」は見事に音楽ジャーナリズムの驕りを衝いたThe Vaselinesのデビュー曲です。
嘘か真か、楽器すら持っていなかったという彼らも今では必要以上に有名な存在になってしまいました。
本作の目玉は何と言っても、CDではここでしか聞くことの出来ないM5「The Assumption As An Elevator」です。ねじ切れそうなギター音が特徴的なシングルB面曲です。実はNorman Blake参加の『Star Wars』BMX Banditsの中で「Retitled」として再演されてはいます。
53rd & 3rd Recordsの閉鎖の煽りを受け、The Boy Hairdressersは12インチ・シングルを1枚のみ残してやむなく解散した訳ですが、後のTeenage Fanclubとしての大活躍ぶりは周知の通りです。
1990年代前半の活躍がなければ、これらの音源もまた一部の好事家に弄ばれるだけだったのかも知れません。
のちに再発売されたピクチャー・ディスクのアナログ盤とは違い、本CDの収録曲は以下の通りです。
M1「Safety Net」 Shop Assistants (1985)
M2「Cuticles」 Househunters (1986)
M3「E102」 BMX Bandits (1985)
M4「Steaming Train」 Talulah Gosh (1986)
M5「The Assumption As An Elevator」 The Boy Hairdressers (1987)
M6「Son Of A Gun」 The Vaselines (1987)
M7「You Make My Head Explode」 The Groovy Little Numbers (1987)
M8「Talulah Gosh」 Talulah Gosh (1987)
M9「Johnny Alucard」 BMX Bandits (1986)
M10「Surf's Up」 The Beat Poets (1987)
M11「Figure 4」 BMX Bandits (1988)
M12「The Girl With The Strwaberry Hair」 Talulah Gosh (1987)