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by chitlin
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ハートを狙い撃ち (1992)

 本作は幻の名盤解放歌集*クラウン編に当たる『ハートを狙い撃ち』です。

ハートを狙い撃ち (1992)_e0038994_0144753.jpg

  “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 怪しく蠢く業深き歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 祈るようなM1「妻の日の愛のかたみに」における語りの部分では、思わず「Epitaph」King Crimsonと表裏一体であることを錯覚させる奥深さに身震いしてしまいます。

 続く表題曲M2「ハートを狙い撃ち」で早くも血圧が跳ね上がります。世界に轟く悶絶ガレージ「赤く赤くハートが」ザ・レンジャーズに肉迫する無軌道ぶりを発揮する歌い口が眩しい、これぞ和製ガレージの真骨頂といった具合です。
 ペランペランのギター・ソロと胸を焦がしたような掛け声が思いのほかに相乗効果をあげています。

 じっくりと聞かせるM3「こころがわり」は実力派コーラス・グループ、サムソナイツの出戻り直後のムード歌謡です。

 恥も外聞もなく破廉恥なほどに意気揚々なエレキ歌謡のM6「東京・ア・ゴー・ゴー」には嫌が応にも乗せられ、一緒になって合いの手を入れずにはいられません。

 西郷輝彦が密かに野望を歌うのがM9「ローリング・ストーンズは来なかった」です。
 著名ミュージシャン達の名前を引き合いに出し、それらを連呼するどさくさに紛れて大胆な自己肯定を強引に捩じ込んで来ます。前向きと言いましょうか厚かましいと言いましょうかその姿勢がラテンのビートに寸分違わず一致する逞しさを持ち合わせています。
 作詞、作曲、編曲を手掛けたのはあの“夜のワーグナー”の異名を欲しいままにする藤本卓也です。

 M10「夏の夢」とM11「可愛い悪魔」の2曲は『カルトGSコレクション』という括りで中締めの役回りを果たしています。

 特にミッキー・カーチスとザ・サムライズのM10「夏の夢」は驚くほどに夢見心地のラウンジ調です。まどろみ加減ともども完成度が高いグループの自作曲です。

 元の『幻の名盤解放歌集』に戻った途端、家庭崩壊を開陳するという歌い出しで始まり絶望の淵を綱渡りするかのようなM12「マサオ」には暗澹たる気持ちにさせられますが、M14「四国のおばあちゃん」の私信のような佇まいに一安心させられます。

 鳥羽一郎を引っ張り出したM16「俺はやる」ではスケールの大きさが見事に表現され、字余りと字足らずが必然的に交錯する英語詞のM17「Get Tomorrow (三百六十五歩のマーチ)」で大円団を迎えます。



 収録曲は以下の通りです。

 M1「妻の日の愛のかたみに」苅田千賀子 (語り:池上三重子)(1965)
 M2「ハートを狙い撃ち」有馬竜之介 (1969)
 M3「こころがわり」山岸英樹とサムソナイツ (1969)
 M4「お聞き下さい皆様よ」津田耕次 (1963)
 M5「四時半ブルース一節太郎 (1969)
 M6「東京・ア・ゴー・ゴー」高木たかし (演奏:田辺昭和とザ・スパイダース)(1966)
 M7「ワン・ツー・スリー・ラブ」よつば姉妹 (1967)
 M8「ドンデン育ちのおけさっこ」おさげ姉妹 (1963)
 M9ローリング・ストーンズは来なかった」西郷輝彦 [詞・曲:藤本卓也](1973)
 M10「夏の夢」ミッキー・カーチスとザ・サムライズ (1968)
 M11「可愛い悪魔」クーガーズ (1968)
 M12「マサオ」赤木さとし (1980)
 M13「行きずりの人」ノンちゃんと兄ちゃん (1969)
 M14「四国のおばあちゃん」森雄二とサザンクロス、橋本直美 (1980)
 M15「ロス・プリモスのディスコ・鹿児島おはら節」黒沢明とロス・プリモス (1979)
 M16「俺はやる」鳥羽一郎・ムーディ松島 (1985)
 M17「Get Tomorrow(三百六十五歩のマーチ)」マイク三宅 (1976)
by chitlin | 2006-05-23 00:26 | J-Pop