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by chitlin
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スナッキーで踊ろう (1992)

 本作は幻の名盤解放歌集*日本コロムビア編に当たる『スナッキーで踊ろう』です。

スナッキーで踊ろう (1992)_e0038994_1004672.jpg

 “すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”

 この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。

 業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。

 華々しく冒頭を飾るのは、風呂場で録音されたかのように素っ頓狂に響くサビに対してスナッキー・ガールズによる甲高いコーラスも効果的なM1「スナッキーで踊ろう」です。
 本盤の表題曲だけあって歌謡の概念を揺るがすような衝撃をもたらすこと必至です。また、それ以上にこの『幻の名盤解放歌集』シリーズを代表する1曲であり、その存在を結果的に広く白日の下に晒すきっかけとなったことは確実でしょう。
 とぐろを巻くギターの音色や控え目なオルガンも怪しく響くある種サイケデリックな酩酊感を味わえること請け合いです。

 特筆すべきは6曲も収録されているマリア四郎の過剰なまでに恐ろしい粘着質です。貴男の骨の髄にまで絡み付くような、情念が蒼白くたぎるその歌唱は唯一無二のものです。悶絶歌謡の頂点を極めています。 
 地味に劇的な展開を見せるM3「傷恋」やM11「恋情」にしても尋常ではない作品なのですが。
 それにも増して、軽々と別次元へと跳躍してみせるM2「もだえ」とM12「恋の吹きだまり」には即刻胸を撃ち抜かれてしまいます。

 続くは打って変わって青春歌謡が亜脱臼したようなM4「青春火山」で“火の海”に包まれ、歯止めの利かないエレキ歌謡M5「恋のチューリップ」が徹夜明けの高揚感を思い出させます。

 かすれた歌声がなんとも艶やかなM6「南国の夜」で一服と思いきや、これがまた不用意に聞き逃せないムード歌謡の逸品に仕上げられています。

 藁にもすがりつきたい心情が手に取るように伝わって来るM7「東京のひと」とM8「太陽がほしい」もまた、それぞれに入魂の1曲です。

 一億総中流などという戯言を2千万光年の彼方に蹴飛ばしてしまうのが M10「父ちゃんどこさ行った」です。その場の空気を瞬時に凍り付かせる極めて殺傷能力の高い、涙なくしては聴くことが許されない幼女の一撃です。“近所の人達 口うるせ”だそうです。

 最後のM15「どこへ行くの」がこれまた、今まで何事もなかったかのような空虚さを露呈しています。

 抜群の高打率を誇る数々の 『幻の名盤解放歌集』において、本作は希有な選曲に恵まれた1枚です。



 収録曲は以下の通りです。

 M1「スナッキーで踊ろう」海道はじめ/スナッキー・ガールズ(風吹ジュン・吉沢京子・小山ルミ) (1968)
 M2「もだえ」マリア四郎 (1968)
 M3「傷恋」マリア四郎 (1968)
 M4「青春火山」港孝也 (1966)
 M5「恋のチューリップ」港孝也とパッション・グループ (1967)
 M6「南国の夜」中井昭とコロラティーノ (1969)
 M7「東京のひと」ゲイリー高木とルーパー6 (1970)
 M8「太陽がほしい」万里れい子 (1967)
 M9「磯づり音頭」野田憲司とギャランティ (1976)
 M10「父ちゃんどこさ行った」奈良寮子 (1972)
 M11「恋情」マリア四郎 (1968)
 M12「恋の吹きだまり」マリア四郎 (1968)
 M13「女の裏町」マリア四郎 (1969)
 M14「あなたの愛を知りました」マリア四郎 (1969)
 M15「どこへ行くの」川崎幸子・敏子 (1970)
by chitlin | 2006-07-30 10:02 | J-Pop