The Modern Lovers / Rock 'N' Roll With The Modern Lovers (1977)
2006年 08月 24日
BMX BanditsのDuglas T. Stewartにとって初めてのレコードとしてこの『Rock 'N' Roll With The Modern Lovers』が挙げられています。それをきっかけに興味を持ち、Jonathan Richmanの音盤を個人的にも初めて耳にしたのが本作でした。
一聴して、それはもう拍子抜けでした。いきなりチャンチキと始まったかと思えば、全編生楽器を駆使した民謡丸出しです。
それとは別に彼ら自身が実に演奏を楽しんでいることがこちらに伝わって来ます。
ジャケット・デザインとしてはどこか虚ろなグループ・ショット(実は絵です)に大きく“Rock 'N' Roll”の文字が踊っている訳ですから、その内容との落差たるや破格のものがあります。
二十歳前後の頃に事前情報として、“The Velvet Undergroundとニューヨーク・パンクを繋ぐミッシング・リンク”だとかいうありきたりの文言を刷込まれていましたので、最初に耳にしてみた際には思い切り戸惑いました。実際に、John Cale制作のセッション集『The Modern Lovers』(1976)ではパンクの源流と認められる鬱蒼とした演奏を存分に味わうことが出来ますので。
次から次へと耳に飛び込んで来るどことなく可愛らしい手作り感覚溢れるこぢんまりとした音楽たちはワールド・ミュージックの先駆けか、はたまた歪な憧憬かといった様相です。
ある意味、衝撃的です。そんな突然変異のフォーク・ミュージックなのかも知れない楽曲群を嬉々として、そしてごく自然体でこなす彼らを何がそうさせるのでしょうか。
とにもかくにも、とりわけM2「Ice Cream Man」で完全KO間違いなしという奇跡的な1枚です。
ちなみに、今回の一連の紙ジャケットCDについて、これらの商品単価はどういう根拠に依るものなのでしょう。今どき、紙ジャケットに大した仕掛けもないにもかかわらず3,000円近い価格帯が一般の消費者に受け入れられるとは到底考えられません。
やはり、先日紙ジャケットCDとしてDonvanの初期作品2枚が同じように発売されましたが、これらも含めて恐らくはCastle Musicからのライセンスを受けての商品化でしょう。
Castle MusicはThe Small Facesの音源を巡ってAndrew Loog Oldhamと揉めていた(る)こともあり、いまひとつ信用なりません。
せっかくの日本盤発売なのですから、これを機により一層幅広く聞かれることを期待したいものですが、あまりにも配慮の足らないCD化としか言いようがありません。