Jackie Wilson / The Very Best Of Jackie Wilson (1993)
2006年 10月 28日
これを買い求めたのもひとえに屈指のノーザン・ダンサー、M22「Your Love Keeps Lifting Me High And Higher」聞きたさでした。
古くは1950年代前半からBilly Ward & The Dominosの一員として活躍する大御所たる所以は歌って踊れるという芸能的な側面も大きいのでしょう。
本来ならばSam CookeやRay Charles、James Brownといった名だたるソウル・ミュージックの巨人たちに伍する資質を備えていると思しきJackie Wilsonですが、知名度の点から言ってもほかの偉大な歌手たちの後塵を拝したままなのが実情のようです。
流石にAce Records編纂だけありまして、The Dominos独立後の1950年代後半から1970年代前半にかけて在籍したBrunswick Records時代の音源がほぼ編年体で24曲も詰め込まれています。
本盤の前半ではやはり時節柄でしょう、R&B然とした体裁に加えて独特の伸びやかで張りのある唱法が強く押し出されています。
このR&B時代の初期における曲作りには後にMotown recordsを立ち上げる若き日のBerry Gordy Jr.も関わっていまして、大ヒットとなった大甘バラードM2「Lonely Teardrops」などが挙げられます。
また、M8「Night」のように歌い上げ過ぎる嫌いもありまして、過剰なしつこさを感じてしまうほどですが、歌の巧さは天下一品です。
1960年代半ば以降、明らかにバックトラックもJackie Wilson自身の歌にも変化を見て取れます。本盤ではM17「Whispers(Gettin' Louder)」(1966)に顕著です。
特にこの楽曲でははち切れんばかりの歌を支える女声バック・ヴォーカルも奏功していますし、シカゴ・ソウル特有の軽やかさが芽吹いています。
終盤で繰り広げられるR&Bの限界を打ち破りソウル・ミュージックへと昇華させたかのような、そんな歴史的現場に立ち会っているような場面には何かと逐一血が騒いでしまいます。