Nirvana / Nevermind (1991)
2006年 11月 20日

1991年の秋、ちょうど今頃のことだったのかも知れません。
今は亡きヴァージン・メガストア新宿店が当時の丸井新宿店ファッション館の地下1階で営業していたその“Indies”コーナーにて頓知の利いたジャケット写真に吸い寄せられてしまいました。
壁一面に本作のCDが面陳されていたことを今でも鮮明に記憶しています。
全米チャートを駆け上がっていることが既に話題になってはいましたが、裏面に刷り込まれたSub Pop Recordsのロゴ・マーク自体は勿論、それが何を意味するかも知らぬままに買い求めました。
この輸入盤CDにはシークレット・トラックとして、混沌の極みのM13「Endless Nameless」が収録されていますので、初回出荷分ではないことが判ります。
ドラムスのビートが強靭な割には“売れそな殺伐”(©ロッキング・オン)よろしく、全体的に小綺麗な音に仕上げられていますし、前作の『Bleach』(1989)と比較するまでもなくその磨き込まれた音像は歴然としています。
実際に収録曲の骨格は片っ端からポップです。よって、一切の風化から逃れることに成功しています。
Kurt Cobain自身、ソングライターとしての資質を十分に自覚していた節があり、それなりの自己顕示欲をも抱えていたように見受けられます。
そして、彼のあの声、荒んでいながらもあの糸を引くような声質にはひとたまりもありませんでした。一度耳にすれば決して忘れられない、ひどく印象的なものです。
また、それらとは関係のないところで、負の感情に突き動かされ身を削るかのように絶叫するKurt Cobainに惹き付けられるのに時間は掛かりませんでした。
頭のM1「Smells Like Teen Spirit」、その一発がすべてでした。
当時、二十歳のその身にとってはそれで充分だったのです。
暴走する「Territorial Pissings」から始まる後半の流れが妙に気が利いていることに今では気付いています。
きっちりと爪痕を残して行くM9「Lounge Act」やそのやるせなさにうなだれるほかないM12「Something In The Way」にしても、M1「Smells Like Teen Spirit」を凌駕する勢いを持ち合わせています。
中指を立てた姿をわざわざブックレットに掲載することが微笑ましかったり、その腕にK Recordsのロゴ・マークを彫ったKurt Cobainに未だに親近感を抱かずにはおれません。