ドラマチック・お色気・ブルース (1996)
2006年 11月 23日
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
バブル崩壊後の経済状況の落ち込みよりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
のっけから『渚の歓喜(エクスタシー)』(1992)にて大々的に扱われた應蘭芳によるM1「ドラマチック・ブルース」が炸裂します。咽び泣くサックスを背に、その火照った身体をくねらせまくっています。
ここまで来ると訳もなく怪物のように思えてなりません。
さて、気を取り直しまして。
間髪入れずにプティ・マミがM2「Baby Doll」とM3「Girl Friend」を連射、このデレデレぶりには被弾すること必至です。プティ・マミひとりの小芝居が妙に生々しいために、単なる疑似体験以上の手応えを感じさせてくれます。(←我ながら気色悪い)
そんな興奮冷めやらぬ中、競演の経験もあるサンドラ・ジュリアンと池玲子がそれぞれにM4「サンドラの森」とM5「変身」で以て股間を直撃。
M4「サンドラの森」は『セクシー・ポエム』(1972)に収録されている、比較的爽やかな1曲です。
『恍惚の世界』(1971)にも収録されていないM5「変身」は雰囲気も抜群、演奏も非常に熟れたものですので大満足です。
このなりふり構わない前半の流れには圧倒されるしか術がありません。
中盤に来てM9「二つのコーヒー」、M10「二杯目のコーヒー」そしてM11「三杯の珈琲」という心憎い演出によってアルバム全体の構成に起伏が生じて、聞き手を飽きさせることがありません。
M15「蝶々」やM16「キチ・きち・吉」となると途端にきな臭さが漂いますが、それ以外の収録曲はと言えば概ね水準の高いお色気度を誇っています。
ビクター編のお色気歌謡集も今回で2枚目となりますが、その殺傷能力が低下するどころか輪をかけて貴殿を悩殺に至らしめること確実です。
収録曲は以下の通りです。
M1「ドラマチック・ブルース」應蘭芳 (1971)
M2「Baby Doll」プティ・マミ (1971)
M3「Girl Friend」プティ・マミ (1971)
M4「サンドラの森」サンドラ・ジュリアン(1972)
M5「変身」池玲子(1972)
M6「無口な女の話」水沢夕子(1971)
M7「私は好奇心の強い女」水沢夕子(1973)
M8「ヘイ・モンロー」島津ゆう子(藤本卓也 作曲)(1969)
M9「二つのコーヒー」島津ゆう子(藤本卓也 作曲)(1969)
M10「二杯目のコーヒー」森本和子(藤本卓也 作曲)(1972)
M11「三杯の珈琲」恵レイシー(1977)
M12「運命−さだめ−」藤井明美(1970)
M13「あなたと二日いたい」藤ユキ(1967)
M14「二人ぼっちになりたいの」渡るり子(1968)
M15「蝶々」なるせ・みよこ(1969)
M16「キチ・きち・吉」市丸(1973)
M17「夢は夜ひらく」鈴木庸一とラテン・カンパニオン(ナレーター:應蘭芳)(1968)