若さでムンムン (1993)
2007年 04月 25日
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
失恋によって負った傷よりもはるかに深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
ロカビリー調の表題曲、M1「若さでムンムン」や三島由紀夫が歌う渋味が抜群のM3「からっ風野郎」を差し置いて前半の目玉は梅若クニコの2曲です。
カントリーとドゥワップのコーラスが掛け合わさったうえに東北弁のラップで捲し立てるM5「バイバイ!狂育ママ」の気概と来たら、これ以上ないものですよ。
続くM5「秋田荷方節」は英語による口上から始まり、三味線とタブラが絡む謎の異色作です。と思ったらその実、旅行先のインドでタブラ奏者とお手合わせした成果だということです。
中盤からは歌謡曲に欠かせない要素のリズムものやムードものが続きます。ラテンのM7「ボンゴ天国」、ニューリズムのM8「東京キカンボ娘」とM9「ドドンパ舞妓はん」などが聞き物です。
M8「東京キカンボ娘」を歌う木の実ナナにはやはり得も言われぬ溌剌としたものがあります。
そのほかに目立つのは、きっちりと作り込まれたアイドル歌謡のM14「青い渡り鳥」に破れかぶれなM15「心臓破りの恋」(!)。
更に追い討ちをかけるように続く、ちっともローックぢゃないダークダックスのM16「小唄ロック」や意気込みの割には軽い歌い口のM17「やったるで!」といったところでしょうか。
最後を締めるのはエレキ・ギターの神様、寺内タケシです。
特にM19「羅生門」では流石に大御所らしい壮大なスケール感を湛えております。
何かこう神通力のようなものが確実に働いておりますね、これは。冒頭からサイケデリックな感覚さえ漂う逆回転ギターに導かれて、ひとつの小宇宙が形成されて行く様子を見せつけられているかのようです。
強者揃いの幻の名盤解放歌集にあって、本盤がちと薄口なのはやむを得ないことでしょう。そうは言っても、ちょっとやそっとでは聞くことの出来ない歌謡曲がズラリと並んでいますしね。
収録曲は以下の通りです。
M1「若さでムンムン」美山幸二(1962)
M2「男」神ブラザーズ(1975)
M3「からっ風野郎」三島由紀夫(ギター:深沢七郎)(1960)
M4「屋台の酒」池上昭(1964)
M5「バイバイ!狂育ママ」梅若クニコ(1980)
M6「秋田荷方節」梅若クニコ(1980)
M7「ボンゴ天国」五木詩郎(1968)
M8「東京キカンボ娘」木の実ナナ(1962)
M9「トドンパ舞妓はん」小林万里(1961)
M10「ボクシング小唄」ファイティング原田(1966)
M11「すてきなハイウェイ」二宮ゆき子(1967)
M12「別離のかたみ」三浦みちゆきとザ・プラネッツ(1967)
M13「傀儡ブルース」海音寺剣(1973)
M14「青い渡り鳥」KIDS(1985)
M15「心臓破りの恋」エディ稲垣(1970)
M16「小唄ロック」ダークダックス(1966)
M17「やったるで!」金田星雄(1965)
M18「楢山節考」寺内タケシとブルー・ジーンズ(1972)
M19「羅生門」寺内タケシとブルー・ジーンズ(1972)