サヨナラは出発のことば (1995)
2007年 09月 08日
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
政治家とカネの絶妙な関係よりもはるかに業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
前述の通り、『サヨナラは出発のことば』(1975)というアルバムにシングル曲を追加した安田明とビート・フォークの音源が軸を成しています。
そもそもは『ホイサッサ』(1973)というシングル盤でデビュー、幻の名盤解放歌集*東芝編『男と女の炭坑節』(1994)にB面曲の「男と女の炭坑節」ともども収録されているそうです。
何を隠そう、把握している限りその東芝編の『男と女の炭坑節』こそ幻の名盤解放歌集におきまして唯一所有していないCDです。(あっ、『絶唱!野坂昭如 マリリン・モンロー・ノー・リターン 』(1999)も持っていませんです)
ある意味、フォークとソウル・ミュージックとの融合を目論みファンクに転んだ、ようなところがあるようですね。
それでもこのグループ、どんな手本があるにせよ至極アコースティックなファンキーさを持ち合わせていまして純和風と言いましょうか和式便所風と言いましょうか。
ブックレットの解説に倣ってみますと築40年木造アパート風呂なし共同トイレ四畳半ファンクといったところなのです。
そうです、彼らの音楽が“貧しさ”という言葉から逃れらないことは崖っぷち清貧ファンク歌謡であるM3「或る青春」に集約されています。
目頭が熱くなるのを通り越して嘆息が出てしまいますよ。
一方でM9「愛の血液合せ」におきまして、血液型占いで以て役に立ちそうにない恋愛指南を延々とぶちまけるのはご愛嬌ということで。
『サヨナラは出発のことば』(1975)発売後のシングル曲、M11「ユムラのオババ」にはどう対処して良いのやら。
「尾崎家の祖母」まりちゃんズほど突き抜けたところに欠けますので当然の如く面白味に欠けるのです。
こう言っては何ですけれど、主軸の安田明とビート・フォークよりもむしろそのほかの収録曲の方が興味深いのです。
駄目出しを連発するジュン池内が雄々しく歌い上げるM13「男と女」はビッグバンドを率いて“どうせこの世は男と女”と啖呵を切る辺り、極めて男前度が高い1曲ですよ。
絶句するほかない神経症的朗読歌謡のM15「おはよう・・・海!」で
収録曲は以下の通りです。
M1「サヨナラは出発のことば」安田明とビート・フォーク(1975)
M2「帰ろうか帰ろうか」安田明とビート・フォーク(1975)
M3「或る青春」安田明とビート・フォーク(1975)
M4「街は風の港」安田明とビート・フォーク(1975)
M5「嘘つき」安田明とビート・フォーク(1975)
M6「想い出」安田明とビート・フォーク(1975)
M7「昭和葉隠れ」安田明とビート・フォーク(1975)
M8「愛のテーマ」安田明とビート・フォーク(1975)
M9「愛の血液合せ」安田明とビート・フォーク(1975)
M10「ふりむけば」安田明とビート・フォーク(1975)
M11「ユムラのオババ」安田明とビート・フォーク(1975)
M12「ほおずきの実」安田明とビート・フォーク(1975)
M13「男と女」ジュン池内(1968)
M14「ポスター」マーガレット・アン(1971)
M15「おはよう・・・海!」麻上洋子(1979)